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放課後。
コバセンの用事とやらはあっという間に終わり、俺は閑散とした教室で陽汰が戻ってくるのを待っていた。
「お前ら……さっさと帰れよ。」
「いーや、今日こそ猫ちゃんに会いにいく!そう決めた!」
「だって、今度今度ってずっと先延ばしじゃない。あ、ついでに沙和子も行きたいって!」
「今日は無理だっての。いい加減諦めろバカ。」
何かあった時、あまり人目に触れたくはないのだが、殆どのクラスメイト達が帰った中で見知った面々だけが居座っていた。
以前も猫を見に行くと言って騒いでいたが、どうやらまだ諦めていなかったらしい。
真緒と灯と、ちゃっかり潮までがメンバー入りしたようで、さぁ連れてけと言わんばかりに圧が凄い。
こいつらには悪いが、今はそれどころじゃない。
レポートを出しに行くだけなのに、いくらなんでも遅くないか。
様子を見に行った方がいいかもしれない。
--そう思っていた矢先。
陽汰が教室を出て30分がゆうに経った頃だっただろうか。
教室の扉が音を立てて開いたのは。
「……ひなた、」
「ハァ、ハァ、」
扉を開けたのは陽汰だった。
無事で良かった、と一瞬安堵しかけたが、直ぐに異常さに気付く。
制服のシャツは乱れ、いつもかけているメガネはどこかに落としてきたのかかけていなかった。
息が切れて呼吸が整わない中、絶え絶えに何かを伝えようとしているのがわかった。
「大丈夫だから。とりあえず座った方がいい。」
「え、え、なに、ってか誰……、」
近くの椅子に座らせて、呼吸が整うのを待つ。
事情を知らない真緒達は突然のことへの驚きに顔を見合わせている。
そして、当然ながらメガネを外した陽汰を見て、名前と顔が一致しないようだった。
「ごめ、ごめんなさい……よるくん、言ってくれてたのに、」
「謝ることない。……無事で良かった。」
「……うん、ありがとう、」
口を開いたかと思えば真っ先に謝るところが陽汰らしい。
頭をそっと撫でると、張り詰めていた緊張の糸が切れたように大きな瞳から涙が溢れ出す。
怖くて仕方なかったんだろう。
嗚咽を殺して静かに泣き始める陽汰を見て、俺はただただその背をさすっていた。
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