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変なアイツ
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「やっと終わったぁー……いやまだか」
この人の事、そういやまだ片付けてなかったわ。どうしよっかと言うように下方のベル君を見つめる。
すると、ベル君はにやっと歯茎を見せ、飼い主と思われるその人を踏んで綺麗になったソファーにどかっと座る。
……ほんと、飼い主の事嫌いと言うか、認めてないんだなっ!!
俺はこの犬と掃除をして気付いたことが2つある。
まず一つ目。ベル君は賢い。雑巾がけから洗濯まで手を器用に使わなくて済むものはある程度できる。ちなみに文字も読めるらしく、今、優雅にテーブルに広げてある新聞を読んでる。(なんてハイスペックなんだっ!)
二つ目は、この人の身分の低さ。どうやらベル君からすると、この人はゴミとしか思われていない。だから先ほども踏んづけて知らん顔をしたんだ。
飼い主が犬より下って……どういうことなんだろう……。
俺はため息をついてちょんちょんっと指先で黒ずんでいるこの人の頬をつつくと、眉が少し動き、目がうっすらと開いた。
「あの~、大丈夫っすか……?」
俺の声が聞こえてんだか、聞こえてないんだか分からないが、むくっとその人は起き上がり、お歯黒を塗ったように黒い歯を見せながら「飯を用意しろ」と淡々と俺に命令したのだった。
少々いらついたが、そうだよな、腹を満たさなきゃ詳しい事情も話せないかと俺の寛大な心はそう思ってしまい、今、さっぱりとしたダイニングで炒飯を食わしてやってる。ああ、そう食わしてやってんだっ。
「すごい勢いっ。そんなおなかすいてたのか?」
じーっと真っ黒い物体の食べている姿を俺は両頬に手を当てて机に肘をついて見ながらそう聞く。
「ああ、ここ五日はろくに……ってなんてこと言わせるんだっ、庶民!てゆうか、溜口止めろ、生意気なっ!」
ああ、俺、分かっちゃったのかもしれない。ベル君がこの人の事、嫌いなの。
ベル君、ごめんっ!君はやっぱり正しいよっ、賢いよっ!!とソファーに座りながらこちらのことは知らん顔で新聞を読んでいる彼に謝りを入れ、この人に忠告してやろうかと思ったり。
「じゃあ、これはいらないっかなぁ。さげるよ?」
「ああ!食べるからさげるな」
お皿をさげてやろうかと思い、皿を持ち上げてそういうと、黒い物体は焦って謝ってきた。
メンドクサイ人だなと思いながら彼が食するところを三十分ほど見守っていた。
「ふぅ、食べた食べた。腹も満たされたし、風呂にでも入ってくるか」
そういって何事もなかったように俺に片づけをお願いしながら呑気にそんなことを言う。
俺もその意見には賛成を示した。だって俺も黒い人間とは話したくもないし、なんたって臭い。
どうせ湯船に入って綺麗になっても、不細工な男なんだろうって思いながら食器を洗って待っていた。
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