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1 (星side)
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暖かい春の風。
初めて着るブレザーの制服。
ブルーのシャツに紺のネクタイ、チェックのパンツ。中学3年間学ランだったのと比べると、鏡越しの自分の姿にオレも少し大人になった気分になる。
制服に袖を通し、少しの不安と大きな期待を持って。
オレ、青月星(あおつきせい)はこの春から高校生になった。
「せいー、制服着れたぁー?」
コンコンと軽いノックの後、部屋のドアから顔を出したのはオレの兄ちゃんだ。
兄ちゃんの名前は青月光(あおつき ひかり)
20歳の大学生。
大学に入って染めた髪はサラサラの金髪で、父親譲りの切れ長の瞳に整った顔立ち。175cmの身長と長く細い手足はモデルみたいで、兄弟だってことを感じさせない程、オレの兄ちゃんは綺麗な人。
幼い頃から兄ちゃんは見た目も良くて、性格も良い。
勉強もスポーツもなんでも出来て、異性にも同性にもみんなから人気がある、キラキラ輝く王子様みたいな人。
そんな兄ちゃんは、新しい制服を着たオレをみてぎゅーっと勢い良く抱き締めてきた。
「せいも大きくなったんだねぇ、とっても可愛い。制服、良く似合ってるよ」
兄ちゃんにスッポリと抱き締められてしまったオレは、自分の160cm程しかない身長に切なくなるけれど。それと同時に香ってきた爽やかで甘い香水の匂いが、オレの鼻を掠めていき、兄ちゃんの匂いだなぁってオレは安心する。
「ん、兄ちゃん苦しいっ」
でも、息が出来なくなるくらいに力強く抱き締められていたオレは、我慢出来ずに兄ちゃんの身体を押した。
「あぁ、ごめんね。せいがあまりにも可愛いかったから。強く抱き締めすぎちゃったかな?」
オレと兄ちゃんの間に小さな距離ができ、オレを見て問いかけてくれる兄ちゃんの笑顔を見てオレは赤面する。
オレは、小さい頃から兄ちゃんに憧れていたんだ。
兄ちゃんとは対照的で、オレは母親譲りの大きな瞳に真っ黒な髪、体格にも恵まれず華奢な体。オレは兄ちゃんみたいに愛想も良くないし、すぐに人見知りしちゃうから……オレは周囲の人から、よく人形みたいだってからかわれたりしていたんだけど。
そんなオレを、兄ちゃんはいつでも守ってくれていたから。オレはいつしかそんな優しい兄ちゃんの事が、大好きだって思うようになっていた。
その思いは兄弟としてじゃなくて。
特別な意味での好き。
オレの好きな人は、いつでも優しいオレの兄ちゃん。
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