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  • ポチの「娼年の涙」シリーズ

    屋号を「華乃屋」と言う。

    元は芝居小屋と併設されていた若衆宿が売春に特化し、陰間茶屋として商売を始めた。

    専ら売春を生業としているが中には華乃屋に籍を置く陰間であっても歌舞伎の舞台へ上がり、芸を披露する者も稀に居た。

    桜の間、菊の間、牡丹の間、梅の間………娼年達は花の名前の部屋を与えられ、その名も戴く決まりとなっている。

    桜の間の娼年の名はサクラ、菊の間ならキク、といった具合に彼等には真っ当な名前は無く、年老いて華乃屋を出たり身請けされたりしてその部屋の主が居なくなれば他の者がその部屋と名前を引き継ぐようになっていた。

    口減らしに売られた者、遊女が客との子を孕み育てられず連れて来られた者、役者を目指し自らここへ赴いた者………ここに居る理由は様々で、けれど最終的にやる事はひとつだった。

    春をひさぐ。

    生きる為に、金の為に、男に抱かれ時には女も抱き………そうして、ここ華乃屋に居る者達は皆生きている。

    そんな娼年達の物語。

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