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Encounter_17
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「……よし、おーい雪!終わったぞ」
食器を洗い終え、全部食器に戻してからそう声を掛けると、ソファで丸くなってた雪はひょこひょこと足を引き摺ってキッチンへ来てくれる。
おでこに手を当て、大分下がったらしい熱を確認してから、「おいで」と雪の手を引いた。
向かう先は勿論浴室だ。雪は体を拭いただけで頭洗って無いから、全く臭くは無いがまだくすんだ髪色のまま。そろそろ頭を洗ってやらねば。
――しかし浴室前になって、雪はようやく何をするのか察したらしい。「お、ふろ……」とだけボヤいて、少しだけ眉を顰めた。
ただの風呂嫌いか、またなにか嫌な思い出が有るのか。
まぁ、見逃してやる気は無い。
「捻挫酷くならないようにぬるめだから。
ほら、脱いだ脱いだ」
顰めっ面のままの雪を急かして、パーカーを脱がせる。
恐る恐る脱ぎ始めた雪の相変わらず真っ白な肌には古傷が沢山残っていて、骨が浮き出そうな程身体は細い。少し力を入れれば、折れてしまいそうな程だ。
次いでに自分も入ってしまおうと思って、ワイシャツのボタンを外す。全部脱ぎ終わるまで、雪は少し震えながらもちゃんと待っていてくれた。
「うし、入るぞー」
雪の細く小さな背中を押して、風呂場の扉を開ける。
二人で入るにはちょっと狭いが、まぁ大丈夫だろう。
先ずは雪を椅子に座らせて、洗面器にお湯を汲んで、右足にあまり掛からないよう上からそっとお湯を掛ける。
「……わ、あったかい……」
「傷、しみないか?」
「は……うん、」
返事をした割には熱さにびっくりしてるのか、猫耳がきゅっと伏せられて。可愛くてつい笑みを零してしまう。
そのまま何度か繰り返してから、雪を湯船に浸からせた。
何故か雪は緊張してるらしい、1人なら足を伸ばしても余裕なのに片隅で縮こまっている。
そう言えば部屋でも直ぐに隅っこの方に行きたがるが、これは猫の習性なのか、それとも酷く狭い所で暮らしていたか……
…なんて嫌な考えは取り払って、俺自身も掛け湯をしてからざばんっと思い切り湯船に浸かった。
思い切り水面が揺れ水位も増して、「わ、わ」と慌てる雪を抱き抱えて広々と足を伸ばす。
「こうしたら広いだろ」
そう聞くと雪は困惑した顔でも一応こく、と頷いてくれて、俺は遠慮無く雪を足の間に座らせて浴槽に寄り掛かった。
「あ"ー、気持ちいい……」
やっぱり、風呂は最高だ。
1日中酷使した身体の緊張が解れてくようで、勝手に声が漏れてく。疲労も溶けだして行って、1日のシメには持ってこいだとつくづく思う。本当に、風呂を開発した人を褒め讃えたい。
雪も少しは緊張が解れたらしい。腰の辺りから生えた尻尾もゆらゆらと湯の中で気持ち良さそうに揺らいでいて、安心した。
――そのまま雪を見つめていると。
ふと、一瞬。
ふっと甘い香りが鼻を掠めた気がした。
「……?」
また、この匂いだ。
雪の体臭か何かなのか?頭が麻痺した様になる様な、甘ったるい匂いが、脳に充満していく感覚。
だんだん香りがキツくなっていって、ぐにゃりと視界が歪んで気持ち悪くなってくる。目の前の雪の背に頭が凭れ掛かってしまい、雪の心配した様な声が頭上から降ってきて、俺はゆっくりと顔を上げた。
「たつみ、……」
視界に映る雪が、俺の名を呼んで。
俺を映してる雪の翳った目が、恐怖で揺らいだ、気がした。
もう頭は逆上せたように上手く働かなくて、雪の反応も、自分のしようとしている事すら、分からなくなっていった。
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