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あなたを愛します 14にしおりをはさみました!
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あなたを愛します 14
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ミカの父の趣味で作ったアジア風のバスルームは古くなってきたのでリフォームし、今はホームスパになっている。
バスタブも取り換えたがジャクジーは残っていて、ミカは久しぶりにお湯に浸かりたいと言った。
「退院したばかりで体力ないでしょ」
と、シャワーだけで済ませるように言うアルにミカは
「じゃ、一緒に入ろう? それなら心配いらないでしょ」
と笑う。
「普通のフランス人はお湯に浸かるの好きじゃないよ?」
そう言って呆れるアルもミカの日本贔屓は知っているので、渋々了承した。
いつだったか出張で日本へ行き、ミカは日本茶と和食に嵌った。
ただ、夏の暑さはなかなか堪えるので、それを避けて良く旅行した。
ついにはバスルームのリフォームの際、ミカはバスタブを檜にすると言い出したが管理が面倒だと知って諦めた。
それでも何とかしたかったらしく入浴剤は常備している。
「今日はどれにする?」
「何がある?」
「草津、箱根、熱海、別府」
「ん~、箱根」
「はいはい」
パウダーをお湯に混ぜると独特の香りが広がる。
「いい匂い」
「足元気をつけてよ」
「年寄り扱いしない」
「分かりましたよ、ミカ爺さん」
「こら」
すべらないように手を握るアルは笑いながらからかい、ミカも笑いながら指でアルの額を軽く弾いた。
「ほら、座って」
「え? できるよ、それくらい」
「いいから。洗ってあげる」
アルはミカの頭にいきなりお湯をかけた。
「ゎっぷ、もう! 優しく!」
「年寄り扱いするなって言ったのミカでしょ~」
「意地悪いなぁ、もぉ」
文句を言いながらも笑うミカ。
アルはミカの髪を洗いながら泣きそうになっていた。
嬉しい。
また、こうやって笑い合える。
ミカの髪に触れられる。
アルが鼻をすすり、ミカは目を閉じたまま後ろにいるアルに言った。
「泣いてるの?」
「…泣いてない」
「心配かけたね、アル」
「心配…してない」
「寂しいなぁ」
「だって、ミカは生きてここに帰って来るって…信じてたから」
何か言いかけるミカにアルは、「流すよ」と言って髪をすすぎ始めた。
少し白くなってるとはいえ、きれいなブロンドだ。
昔、絹の金糸だとアルが髪にキスした時は、まさかこんなに長く時を共に過ごすとは思っていなかった。
失いかけて、でも戻ってきてくれたミカ。
アルはその存在を確かめるようにミカの体を洗った。
「アル、お返しに洗ってあげる」
いいよと言いかけて、ミカが愛しそうに自分を見つめているものだから、アルはシャワーをミカに渡した。
「疲れない? 無理しなくていいよ?」
頭を洗って、体も洗おうとするミカにアルはそう言ったが、
「アルに触るの久し振りだから任せてよ」
と楽しそうに言うので心配するのをやめた。
洗い終わって、2人でお湯に浸かるとタイミングを合わせたかのようにため息をつく。
それがおかしくて顔を見合わせて笑った。
「やっぱり自分の家のお風呂は最高だな」
「ま~た、爺臭いこと言って」
パシャッとミカがアルにお湯を跳ね掛けた。
「年寄り扱いしな~い」
「はいはい」
「…でも、いつかそうなるのかな」
「?」
「病院でね、考えてたんだ。意識は戻ったけど、もし、何かの障害が残ったらどうしようって。アルの負担になるんじゃないかとか、そもそも18も年が離れてるんだから年を取ったら厄介になるって分かってたはずなのにとか、色々ね」
「自分で歩けて食べれて大丈夫じゃん」
「うん、今はそうなんだけどね。でもこの先は分からないでしょ。だからさ、アルを養子じゃなくて、やっぱりパクスにしとけば良かったかなって…。そうすればアルに迷惑かけずに別れられたのに、息子じゃそうもいかないし」
バシャ!
今度はアルがミカにお湯をかけた。
「何言ってんだよ! プロポーズしたじゃん! ミカがどんなでも一生愛して、共にいるって。あの時はまだこんなことまで予想してなかったし、そんな大それた覚悟じゃなかったかもしれないけど、でも、そういうのも込みで生涯一緒に生きるって決めたんだ。迷惑とか言うなよ。俺たち、結婚したんだろ。なら、苦労も共に、だ! っていうか、苦労とか思わないし。だいたい最初に厄介になったの俺だから」
ミカは泣きそうな顔をして笑った。
「ありがとう、アル」
そして、手を伸ばして「キスしてくれる?」とアルを抱き寄せた。
アルが壊れ物を扱うように唇を寄せる。
ミカの両手がアルの頬を包んだ。
「ねぇ、アル、抱いていい?」
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