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姉と弟の深夜にしおりをはさみました!
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姉と弟の深夜
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「ただいま…。」
クタクタになったスニーカーを脱ぐと足が絡まって、その場に倒れた。
「10時…45分…」
その針の指す時刻は雄大を更に疲れさせる。
「ぐはっーー。」
冷たい床に顔を埋め、べそべそしていた。
(ミスコン…なんでそんな人が…もっと上目指せよ!モデルとか芸能人とか!)
ミシッと言う音がして、雄大はようやく顔を上げた。
「あっ、何してんの?あんた。」
そこには赤い顔した詩央里が、ビールの缶を持ったまま、トイレから出てきた。
「姉ちゃんこそ。。何でトイレからビール持って出てきてんだよ。」
「えっ?だって呑んでる途中で行きたくなってさ。大丈夫、これ空だから。ビール駄目だね!トイレ近くなる!」
雄大は呆れながら、ぼつぼつと立ち上がり、リビングへ向かった。
「あんたも呑む?」
ずるずると鞄を肩から下ろした雄大はブンブンと頭を振った。
「いらない。明日も仕事だし。」
「あらあら。一丁前に明日の事を気にするようになったの?すっかり社会人ね。」
ビールの缶を振る詩央里が、からかうように笑った。
「やめてよ。…ご飯ある?」
リビングに続くキッチンに向かいながら、詩央里に尋ねた。
「あると思うわよ。あんたもあの会社、何年目?」
雄大は冷えたご飯をよそいながら、「2年?かな?多分。。」と答えた。
「あんたが仕事始めた時、立ち仕事で足がむくんだのを病気だって言ったり、大量の皿を割った時、帰ってきて泣きながら貯金通帳見たりしてたよね。」
「もう、やめてよ!怒」
雄大はご飯にお茶漬けの素をかけ、お湯を注いだ。
「それ冷たくない?でさ、洋服も初めの方は気合入れすぎて、ゴテゴテ重ね着してみたり、お金無いからって、お父さんのハンチング帽かぶって行ったりしてたよね。」
「もう!」
詩央里に背を向けて、ずるずるとお茶漬けを啜った。
「ごめん、ごめん。なんかさ、うちにも新人入ってきてさ。」
雄大はずるずると啜りながら、詩央里に顔だけ向けた。
「新入社員?」
「そう。大学出たての新入社員。」
”新入社員”の言葉に雄大はズシリと重くなる。
(この不安は何なんだ…)
「新入社員が何?」
詩央里は雄大の向かいの椅子に手をかけた。
「なんか初々しくてさ。一生懸命頑張ってるんだけ、たまにイライラしちゃってさ。忙しい時とかつい冷たく当たっちゃてさ。」
「…恐ろしい先輩だな。(姉ちゃんらしいけど)」
(そうだよな!意外に加藤さんは”恐い先輩”かも!……かも…)
一瞬、心が輝いたが、すぐに納得できない自分がいた。
「でもさ!」
急に詩央里が明るい声を上げたので、雄大はご飯を口に入れたまま、神妙な顔になった。
「今日、あんたが新入社員のころを思い出してさ。この子も家に帰って、うちの雄大みたいに馬鹿やったり、悩んだりしてるのかもなって思ったら、急に可愛く思えてさ。」
「ブッ!!」
雄大は口に入れていたご飯を吹き出してしまった。
「ちょ、ちょっと!汚いわね!」
「ゴハゴハゴハッ!!ご、ゴメン!アフッ!」
「全くもう!ちゃんと片しときなさいよ。」
詩央里は嫌そうな顔をキッチンから離れようとしたので、雄大はつい立ち上がった。
「あのさ!」
「何よ。」
「その後輩はカッコいい人?」
カチカチカチカチ
時計の音だけが2人の間を流れた。
「…はっ!?」
詩央里が思いっきり眉間に皺を寄せた。
「いや…なんかさ!いつも人に厳しい姉ちゃんから、”可愛い”なんて単語が出てくるとは思わなくてさ。」
「どういう意味よ?」
「…さぁ?」
「はぁっ!?」
雄大は引きつった顔で首を傾けると詩央里は更に皺を寄せた。
(僕、何言ってんだろうー。でも聞きたい!)
「カッコよくないわよ!女の子だもん!」
「あっ…」
雄大は詩央里から目を離し、テーブルに散ったご飯粒を集め始めた。
「…そ、そっか…」
(アホな自分…何したいんだか…)
「変な奴ね。カッコいい男の子だったら、私だってもっとテンション上がるわよ。」
「!!?」
雄大は再び詩央里に顔を向けた。
「テンション上がる!?」
「あんただって、若くて可愛いアルバイト入ったらテンション上がるでしょう?少しは優しく教えたりするんでしょう?」
「えっ……僕、教えたりはあまりしたことない。みんな聞いてこないし。」
「あっ!わかるわ!あんた童顔だから、同じ新人かと思うもん。」
「ぐっ…。」
(それでか!!下見にられてる感はあるもんな…)
「いい?職場に新人が入ってくるとそれだけで社内が騒つくのよ。それに増して、イケメンだとしたら、女子社員達のテンションは上がって、化粧に倍時間をかけ、机の上も整理して、作らなかった笑顔も出てくるのよ!」
「お、おぅ…」
迫る詩央里に雄大は身体を引いた。
「それは男性側もそうなのかな??ほら…もしだよ、元ミスとかが入ったら。」
詩央里はフンッと腕を組んだ。
「当たり前よ!特に男性は未婚だろが、既婚だろが、チャンスがあればモノにしたいのよ!」
「えっ!!?」
雄大は目を見開いて、詩央里の演説を聞いていた。
「その中で、社内は絶好の出会いの場よ! んでもって、モテる女はその社内の中で、もっとも仕事ができて、モテる男と付き合える訳よ!そうやってねぇ、世の中は不公平に出来てんのよ!わかった!?」
雄大は反り返った詩央里から目を離し、ため息をついた。
「そう…だよね…」
冷えたお茶漬けを食べる気力も空腹も無くなってしまった。
ガチャ
「何時だと思ってんの、バカ姉弟(きょうだい)。さっさと寝なさい。」
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