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春の終わりの雨にしおりをはさみました!
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春の終わりの雨
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春の雨は重い。
せっかく暖かくなってきたのに、重い雨が待ちわびた春の気持ちに水を差してくる。
ザアザアザアザア
「ゴメンね、雨なのに残業させて。」
レジにいた店長が両手を合わせた。
「いいですよ。西川ちゃん、来れるんですか?途中で事故があったって。」
「西川ちゃん自身じゃなくて、前の車が事故ったって。それに雨だから混んでるんだよ。」
「そうなんだ!よかった。雨だもんな。。雨嫌いだなー。」
雄大は段ボールを抱えたまま、店長と遠くの大きな窓を見つめた。
「そう?雨が降れば、また暖かくなるじゃないか。」
びっくりした。そんなこと思いもしなかった。
「そうなんだ!」
去年も一昨年もそうだったけな?と思いながら、自分は天気の事なんて気にしたことなかったことに気付かされる。
「それに晴れより、雨の方が室内は儲かるからね。特に暖かくなると皆、郊外へ行っちゃうからね。」
いつも穏やかで気が弱そうな店長が眼鏡の奥を光られた。
「やっぱり…店長なんですね。。」
「そうだよ。店長だよ。」
意味ありげに頷きながら言う店長に雄大も頷き返した。
「お疲れ様です。」
頷き合う2人の間に水色の長袖シャツにライトグレーのズボンを穿いた上村が現れた。
「おっ、お疲れ。」
手を挙げて応える店長に対して、雄大は顔を背け、「お疲れ様です。」とモゴモゴと言った。
「爽やかな格好だね。上村君。」
上村は特に表情も変えずにシャツの袖を折り上げていた。
「まぁ、もう冬物洗っちゃったんで。それにこういう所で働いているんなら、季節は先取りしとかないと恥ずかしいですから。」
「……」
雄大は今日は冬も着ていたカーキー色のカーディガンに白のノーカラーの白シャツにデニムジーンズを合わせていた。
(だってまだ寒いだろう!朝晩とか!今日は雨だから特に!)
怒りが顔に出そうになる雄大に上村が目を向けてきた。
(やばい!目が合った!)
雄大は急いで目を逸らした。
「段ボール持って、ウロウロされたら、お客さんが声掛け辛いです。」
「ちょ…」
上村はシャツから出た少し日に焼けている逞しい腕で、雄大が持っていた段ボールをヒョイと取り上げた。
「これ、店出しでいいですか?」
上村は店長に頷きを見て、雄大に背を向けた。
「自分で運べる!返せよ!」
雄大はカッとなって、上村のシャツの端を掴んむと、上村は顔だけ雄大に向けた。
「椿さんの細腕で運んでたら、お客が手伝いかねませんからね。」
「!!」
「シャツが伸びます。」
冷たく言われ雄大は持っていた上村のシャツの端を乱暴に離した。
「くっ….!」
「……」
上村は蔑むような目で雄大を一瞥し、スタスタと歩いて行った。
「なんだよ!!あいつ!怒」
雄大はバンッとレジと併設された机に拳を押し付けた。
「まぁまぁ、相手は10代だし。」
雄大はくるりと店長に身体を向けた。
「だからですよ!なんで4つも離れた奴に僕があんな事言われなきゃならないんですか!!」
再び雄大はバンッと机を叩いた。
「おう…落ち着いて。机壊れちゃう。。」
「僕の腕は細いから壊れたりしませんよ!」
拗ねるようにぷいっと顔を背けた。
「そんな事、言わないよ。雄大君も男の子なんだから、力持ちなのは分かってるよ。」
「でもあいつが…!」
雄大は上村の歩いた先を指差した。
「雄大君、お客さんがびっくりしちゃうよ。」
店長の指摘に雄大はハッとして、口をつぐんだ。
「…すみません。。」
店長は「うーん。」と息を吐いた。
「しかし、上村君は雄大君だけにはやけに攻撃的だね。私や西川ちゃんにはそんな態度は取らないのに…。」
「僕の事…嫌いなんですよ。。」
(何にもしてないのに…こんなに敵視されたの…初めてだよ。)
俯く雄大に店長はポンッと雄大の赤くなった手を叩いた。
「雄大君を嫌いになる人はいないよ。きっと上村君も何かあったんだよ。今度、注意しとくから。ねっ?」
あやすように店長は雄大の顔を覗き込んだ。
「…はい。」
納得できない顔をして、雄大は唇を尖らせた。
「そんな顔しないの。可愛い顔が台無しよ。」
「ふぅー。」
「ほら、あれ。雄大君の知り合いでしょう?」
店長が顎をしゃくった。
「?」
振り向くと黒いスーツを着た加藤が笑顔で手を振っていた。
「待ってるみたいだよ。」
「…でも。。」
雄大はしよんぼりして、上村が行った先を見た。
「いいんだよ。あの人は上客だから。店長命令!粗相のないように!」
「はい!」
雄大は店長に敬礼して、加藤の元へ向かった。
「加藤さん!」
「店長さんとお話してたの大丈夫?」
「はい!加藤さんは上客だから、粗相のないようにって!」
「そっか!」
加藤の顔いっぱいで笑ってくれた。それだけで雄大はムクムクと元気が出てくる。
「加藤さんは仕事終わ…」
「加藤さん、このお店?」
加藤の後ろから、スラリとした美人が顔を出した。
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