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ゴールデンウィーク2日目にしおりをはさみました!
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ゴールデンウィーク2日目
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朝から最悪だった。
まずパートの菊池がお休みのため、雄大と上村。昼から西川が出勤予定。
雄大は上村にぎくしゃくし、上手く伝達ができなかった。
そのため、上村なら「はぁ?」みたいな顔を3回もされた。
朝イチの電話では、この前買ったマルチカバーの色が思った色じゃなかったので、交換して欲しい。しかし、今、県外に帰ったので、郵送して欲しい。
雄大はお客さんのいる県の店舗に電話して、そっちで交換してもらうようにしてもらうように手配するのに1時間も電話を行ったり来たりしていた。
おかげで人が足りず、中年の男性から「いつまで待たせるんだ!」と30分も怒られた。
その後、モールの本部長が来て、看板の設置場所が悪いと20分あちこちと移動させた。
ノベルティのコースターを付け忘れたのが1件、お釣りの間違いが1件、プレゼント包装の客を間違えを2件。
全て心優しいお客様だったのが、救いだったが、30分の休憩時間は永遠とアクシデントリポートを書く始末だった。
「今日のゆーたんはヤバイわね。」
「えっ?」
レシートの交換をしている横で西川が腕を組んでいた。
「なんかあったの?顔ヤバイよ。」
「朝からクレームにあったから、テンションだだ下がりなだけだよ。」
「それだけ?心ここに在らずって感じ?ゆーたんがあんなミスするの珍しいもん。」
鋭い西川の指摘に雄大は動揺して、上手くレシートがはまらなかった。
「疲れてるのとツイてないだけだよ。。」
「まぁ…そっか…疲れるよね!ずっとオールしてんでしょう?あっ…」
西川が首を伸ばした。
「ゆーたん、疲れ取れるよ。」
西川はウキウキと雄大の袖を引っ張り、売り場を指差した。
「んっ?」
指の先には生成りのシャツにジーンズをはいた背の高い加藤が店に入ってくるのが見えた。
「今、ちょっと人の波が落ち着いたから、行ってきていいわよ。」
「いいよ、行かなくて。」
雄大は動揺しながら、レシートをはめた。
「ここは私がやっとくから、行って来なさいよ!そして合コンよろしく!」
ドーンと西川に押されて、「わわっ!」とレジカウンターから出されるとパッと加藤と目があった。
手も足も緊張が走る。
一歩、近づくたびに心臓の音が早くなる。
(なんて言えばいい…?)
ドクンドクン
加藤が雄大をうつむいたり、ちらりと顔を上げたりと遠慮気味に待っている。
ドクンドクン
「やあ。」
あと3歩のところで、加藤が手を上げた。
「い、いらっしゃいませ。」
そこで雄大は足を止めた。
加藤は何処か余所余所しい感じで、トートバッグの並ぶコーナーを見ていた。
その横顔はいつものように端整だが、なんだか声がかけ辛かった。
「…ここって、バッグはここだけ?」
加藤は雄大を見ずに口を開いた。
「えっと、、どんなバッグを探してるんですか?」
「1泊旅行くらいのバッグを探してるんだ。明日、会社のみんなで温泉旅行に行くから。」
「えっ…?」
ようやく加藤が雄大と顔を合わせた。
「誘われてたんだけど、断ってたんだ。でも昨日電話があって、メンバーの1人が熱出したから、来ないかって、誘われて。。」
何も言葉が出なかった。
加藤は仕方ないような表情を雄大に見せ、再びトートバッグを見ていた。
(それって…)
頭の中がぐるぐるしながら、何とか口を開いた。
「…それって、この前一緒だった人も…行くんですか?」
ピタリと加藤の動きが止まった。
雄大はゴクリと唾を飲んだ。
ドクンドクン
動悸がして、苦しかった。
「うん。」
カッーと頭に血が昇るような締め付けられる感覚。
「…ここには無さそうだね。違う所行ってるよ。ごめんね。仕事中に。じゃあね。」
加藤がくるりと背を向けた。
胸が身体が締め付けらて、苦しくて堪らない。
加藤の姿が遠ざかっていく。
(僕は…僕は…)
ギュッと目をつぶった。
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