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壁をぶち壊せ!にしおりをはさみました!
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壁をぶち壊せ!
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(僕は行って欲しくない!!)
こんなに胸が痛いのに、こんなに息苦しのに、身体は正直に想っているのにこのままにしてたら、何もかも失ってしまう!
(僕は初めから加藤さんが好きなんだ!)
雄大は目を開き、ガバッと顔を上げた。
(追いかけなきゃ!)
「椿さん?」
後ろから休憩上がりの上村が、不審そうに声をかけてきた。
「上村君…。」
人の行き交うフロアに顔を向けると加藤の姿は見えなくなりそうだった。
「僕…」
雄大は胸につけていた名札を乱暴に取り外して、上村に渡した。
「ちょっと出てくる!」
「えっ?椿さん!?」
驚いた顔の上村に背を向け、雄大は走り出した。
その先にはもう加藤の姿は見えなくなっていた。
(嘘だろう…)
家族連れ、恋人同士、友達、1人…その人の間を縫うように走ったが、人の増えてきたモール内を走るのは至難の技だった。
「すみません!ごめんなさい!」
人にぶつかりながら、雄大は前へ前へと進んだ。
エスカレーターを上りながら、キョロキョロしていると遠くのエスカレーターの下りに乗っている生成りのシャツを見つけた。
「!!」
雄大は「すみません!」と言って急いでエスカレーターを上り、すぐさま反対側のエスカレーター下りに走った。
下りに乗った時にはもう生成りのシャツは見当たらなかった。
バタバタと駆け下りて、雄大はキョロキョロと当てもなく走り出した。
(神様!お願い!!)
雄大はギュッと唇をかんだ。
パンッ!!
後ろから大きな音がして、ビクッとした振り返ると割れた風船を持った小さな子供がいた。
子供は泣き出し、親はあらあらとあやし始めた。
その親子のずっと先に、さっき見た生成りのシャツを着た頭一つ分高い人が歩いていた。
「ま、待って…」
雄大はキュッと走り出した。
(待って、、お願い!)
人にぶつかりながら、ただその後ろ姿だけを見つめた。
追いつきたい、ただそれだけ。
只々、追いついて、伝えたい!
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