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人から聞くその人の話
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浅木、雄大、西川の友達のマリちゃん、成康の会社の後輩の中島が並んだ。
「雄大君、本当20超えてる?」
「あっ、はい。」
「じゃあ、飲んで、飲んで。」
ほろ酔いの浅木は自分の持っていたジョッキを雄大に押し付けた。
「あっ、でもチャリなんで…」
「あっ、そうなの?今日、俺しか飲んでないんだけど。」
「未成年もいますからね。」
ブスリとした顔で飲む浅木をたしなめた。
目の前では成康がマイクを持って歌っていた。
流行りのラブソングを低い声で歌うと左にいた野上は両手を組んでるし、右にいた西川の友達のリカちゃんはぽうっと 聞いていた。
「あいつ、最近、モテるんだよなー。」
浅木の言葉に雄大はピクリと反応した。
「まぁ、あの顔立ちだろう?ぼちぼちモテてはいたんだけど、すげー可愛い彼女がいたから、みんな諦めてたんだよ。そしたら、クリスマス前に別れたみたいでさ。それからあいつ、なんか吹っ切れたようにカッコよくなってさ。なんかイキイキして、いっつも笑顔になったんだよ。みーんな、近寄りやすくなったし、優しいし、カッコいいしで、得意先の受付嬢まで噂になりやがってさ。」
ハッピーエンドのラブソングを歌う成康の横顔を見つめた。
「…モテそうですもん。。」
「あいつは女に苦労はしないよ。俺なんか風俗行かなきゃ、溜まったままだよ。誰も相手にしてくれないからさ。。」
雄大はばっと浅木の顔をまじまじと見た。
「ん?雄大君も苦労してる?あぁ、顔が可愛すぎて、女の子引いちゃうかー。俺がいい風俗連れてってやろうか?デリヘルとか呼んだことないだろう?」
「あ…はぁ…」
「好きな子と出来るのが1番いいとは思うけど、デリヘルも悪くないぜ。よし、今度連れてってやる。」
肩に手を回され、バシバシと叩かれた。
(成康さん…どうしてるんだろう?…苦労してない…?)
不安な気持ちが混ざり合って、成康の歌声が耳に入らなかった。
AM1時
「じゃあ、今日はこれで解散!!」
「上村君、アドレス教えて。」
「浅木さん、大丈夫ですか?」
まだネオン輝く繁華街で男女9人は帰るともなしに突っ立っていた。
「雄大君。」
振り向くとネオンライトを顔に受けた成康が立っていた。
「誘ったのに奢ってもらうなんて…やっぱり、僕も払います。」
「いいんだよ。ほぼあいつのビール代だし。」
成康はベロンベロンになって中島に寄りかかる浅木を一瞥した。
「でも…悪いですし。」
雄大は背負っていたリュックサックから財布を出そうとした。
「いいよ。恋人に出させる訳にはいかないだろう。」
成康の手が雄大の頬に触れた。
(恋人…)
胸がカッと熱くなり、ドキドキが止まらない。
成康の長い睫毛をバサバサさせ、手の甲で雄大の頬を撫でた。
「成康さん、あの…」
「かとちゃーん。女の子にお前のアドレス教えていいー?」
浅木のろれつの回らない声がし、成康は雄大から手を離し、振り返った。
「おい、勝手に…ったく、あいつ。。」
成康は再び雄大の頬に手を当て、「待ってて」と耳元に呟いた。
女の子に囲まれている成康を見つめていると不安で押し潰されそうになった。
(負ける…だって不利な状況だよ。僕は同性し、男臭いし、ピンクもレースも着れないし、それに…出来ないし…セックス…いや、出来ない事も無いけど、僕には胸の膨らみもないし、成康と同じモノが付い出るわけだし…どうしたら…)
「椿さん。」
突然声をかけられ、雄大はビクッとした。
「あっ…」
振り向くと上村が立っていた。
「上村君…?」
いつもの無表情でジッと雄大を見つめてくる。
「アドレス、教えて下さい。」
上村は準備万端のように携帯を見つめていた。
「えっ…?」
「昨日、言ったでしょう?」
雄大はため息をついた。
「何で僕なの?」
「…それは…分かんないけど…」
上村が困ったような顔をするので、雄大は目を疑った。
「分かんないって…」
「上村君、送ってー。」
急に腕が上村の首に巻き付けられ、おぶさるよう野上が絡んできた。
「の、野上さん…」
苦しそうな上村を見て、雄大は眉をひそめた。
「野上さん、いい加減にして下さい。」
「えっ?」
少し飲んだのか頬を染めた野上が雄大を見た。
「上村君は未成年ですよ。それにうちのバイトです。貴方は社員という立場でしょう?その立場も忘れて、彼にそんな態度を取るなんて、おかしいと思いますよ。」
「えっ??おかしい?」
わからないような顔をする野上にイラっとして、雄大はつい上村の手を引いた。
「とにかく!恋愛するなとはいいませんが、彼がバイト生だって事と困らせるような事はしないで下さい!」
「送ってて言ってるだけだしー。」
「じゃあ僕が送ります!」
「えっー!椿さんはやだー!一緒に歩きたくない!顔が小さすぎるもん!」
「はぁ!?いや、ちょっと…」
「ヤダヤダヤダ!」
駄々をこねる野上の後ろにいた成康と目が合った。
初めて見る厳しい目。
雄大は自分の後ろに上村を隠しているのを思い出した。
(あっ…)
成康はすぐに目をそらし、何もなかったかのようにまた西川たちと話していた。
(成康さん。。)
雄大の腕にひやりとした指が触れた。
「余計な誤解、させちゃったかもしれませんね。」
上村の笑いを含んだような声が耳元で囁いた。
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