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所用の腹痛にしおりをはさみました!
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所用の腹痛
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17時15分
雄大は目をキョロキョロさせ、売り場の時計を合わせていた。
「野上君、あのこのPOPね。。」
「あっ!もう5時回ったんだ!早く上村君来ないかなー。」
「…好きだねー。上村君。」
「カラオケでもーあんまりお近づきできなくてぇ。てんちょー、新しい人入ったら、仕切り直しで、歓迎会しましょー。あっ、新しい人、まだ来ないんですか?」
「うーん。来週には来れるらしいんたけど、なんか入院したみたいで…んでPOP…」
「えっ!?入院!??」
野上の声が店内に大きく響いていたが、雄大は全く耳に入って来なかった。
(今日で12日目…)
あのカラオケからぱったり成康が来なくなって12日が経った。
(連絡もないし…)
雄大は下を向いて、はあっーと息を吐いた。
(こっちから連絡…)
帰り際の冷たい突き放すような目を思い出した。
(拒絶…だよな。。この状況って。。)
ぎゅっと痛む胸をつかむように服を掴んだ。
この12日間、徐々に痛むが増していく。
初めはチクチクしていただけなのに、今はズシンとした重い痛みに耐えている。
しかも、夕方になるとそれにプラスして、心拍数が上がるのだ。
(今日も来てくれないのかな?)
忙しいのかな?とかも思ったが、忙しくても成康が顔を出してくれていた事、忙しい時は忙しいと言ってくれた成康の笑顔を思い出すと泣きたくなった。
”加藤さんとメールしてるんだぁー”
昨日、西川からそう言われた時、今まで抱こうとも思わなかった、西川への怒りが出てきた。
”加藤さん、すっごく優しいの!なんか他の2人もメールしたって言うけど、私の方が一歩前進させてもらったわ。”
(前進?)
”えっ?だから、来週の日曜日、美術館行きませんかって。美術館とか加藤さんっぽいでしょう?まだ返事は来てないけど…ゆーちゃんもそれとなく私の印象、聞いといて。”
「……聞きたくないよ。。」
雄大はぼそりと呟いた。
17時30分
それぞれの時計が同じ時刻を刻んでいた。
(早くて成康さんは18時に終わるはずだ。今、出て行けば、5分前には成康さんの会社に着けるはずだ。。)
雄大はバッと立ち上がって、走り出した。
「店長!!」
レジでノートを広げていた店長は目を丸くして、顔を上げた。
「おっ、どうしたの?」
「お腹痛いんで早退させて下さい!」
「ん?んん??」
店長は2度、黒縁メガネを手で押し上げた。
「腹痛いんで、帰らせて下さい!」
雄大はおなざりて程度に腹部を撫ぜた。
「あれ?そんな感じだった?さっき、私の差し入れのアイス食べてたよね?」
「あっ、あれが当たったんだと思います!!」
「……」
店長は持っていたペンでぽりぽりと頭をかいた。
「……そうか…じゃあ、帰っていいよ。」
「ありがとうございます!」
雄大は頭を下げた。
「お腹痛いんなら仕方ないよね。うん。。」
「お疲れ様です!」
雄大は再び、深く頭を下げて、裏に引っ込んだ。
17時35分
「野上さん!僕、早退するから!」
「はぁ、はぁっ!?」
「お疲れ様!」
雄大は急いで荷物を持ち、慌てて店を出た。
(このままじゃヤダ。西川ちゃんに奪われるのもヤダ!絶対、ヤダ!!)
「あれ?椿さん。」
出口付近で名前を呼ばれ、顔を上げると5メートルくらい離れた所にモールに入っていく上村と目が合った。
雄大はプイッと顔を背け、出口へと足を進めた。
(あいつのせいだし!)
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