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18歳以上ですか?
祝日にしおりをはさみました!
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祝日
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本日は海の日です。
皆様、祝日を楽しんでいますか?
祝日=お休み
しかし、我々は…
「いらっしゃいませーーー!」
「只今、タイムセールです!!」
祝日=ボーナス=戦線です!!
「いらっしゃいませーー!」
朝から叫ぶこの接客用語とエアコンのせいで、喉がカラカラしていた。
「これ、他の色ありますか?」
「あっ、はい。えっとーー」
雄大は笑顔を絶やさないうにディスプレイの下のストッカーを開いた。
(あぁ……座りたい。。)
「ゆーちゃん☆」
向かいの店でタイムセールが始まったため、雄大のお店も少し落ち着きを取り戻した。
「西川ちゃん。」
「今日は忙しそうね。」
デニムのショートスカートにイエローのブラウスを着て、健康的な肌を見せる西川はいつもと違い、元気一杯の女子大生だった。
「今日は希望休だって?おかげで僕はラストまでだよ。」
雄大が茶化すように言うと西川はうふふっと笑った。
いつも年上のように見えるが、夏服の姿は年相応に見えた。
「今日は絶対多いと思ったもん。祝日でしょう、バーゲンでしょう、ボーナス出たて。でもうちはまだいいでしょう?お洋服屋さんとかめっちゃ多かったよ。」
「あぁ、西川ちゃんも沢山持ってるもんね。」
雄大は西川の両脇に下げられた紙袋を見た。
「だって安いんだもん☆」
唇をすぼめる姿は可愛いくて、少し本当の笑みがこぼれた。
「おぉ、雄大君。もうすぐだよ!」
カタカタと眼鏡を直しながら、店長が飛び出してきた。
「あっ、はい。」
「もうすぐって?」
西川が雄大の顔を見た。
「おぉ、西川ちゃん!」
店長が西川を驚いた顔で見た。
「店長、持って来ましたよ。」
3人が一斉に見た先には、両手に何かを持ってる上村が立っていた。
「よし!これからが勝負だ!」
「勝負って?」
店長は上村からタスキのような物を受け取り、スルリと身体を差し込んだ。
「今からうちがタイムセールだ!」
店長は”Time sale 10%off”という、黄色いタスキをかけ、バババンっと胸を張った。
「…タイムセール?うちもするんですか?」
西川は屈んでタスキをみた。
「あぁ!我々は…」
店長は雄大と上村を手招きして、「ここ、ここ。」雄大を店長と上村の前に膝をつかせた。
「バーゲンの王者になるんだ!」
「……」(西川)
「……」(雄大)
「店長、もうすぐです。」
上村は腕時計を見て、雄大は膝の埃を払いながら立ち上がった。
「店長、やっぱ無理ですよ。うちの店じゃあ、アパレル系には勝てませんよ。」
「何を言う!モール内で利益率1位になった所には3万円の商品券貰えるんだ!みんなで焼肉行くんだろう!行くぞー!」
走り出した店長に3人は唖然と見ていた。
「じゃあ僕も…」
「あっ、椿さん。」
雄大が売り場につこうとした時、上村が声をかけた。
「椿さんはこれを…」
上村は持っていたタスキを雄大にかけた。
右の長い指が雄大の肩に触れ、左手が雄大のそっと腕を掴んだ。
「あっ…」
上村の多いまつ毛がすぐそばだった。
「よし。」
一歩下がって、満足そうに口の端を上げた。
「あ、ありがと…」
「…なんかアホ可愛いですね。」
「ぐっ……」
上村は毒を吐いて、くるりと雄大に背を向けた。
「上村君、今日出勤だったんだねーー。」
西川がチョロチョロと上村の回りをまとわりつきながら、ついて行った。
(西川ちゃん、まだ上村君狙ってるんだ。ライバルの野上さんがお休みで良かったぁー。あんな姿見たら、野上さん、仕事にならないからなー。)
ライバル……その言葉に存在に少し引っかかった。
「椿さーーーん。」
ドスドスと牟田が赤い顔をして歩いてきた。
「あれ?次、休憩じゃなかったですっけ?」
牟田は雄大のタスキをジロジロ見ながら、額の汗を拭いった。
「タイムセール!!2点以上お買い上げで10%offでーーす!」
店長がプラカードを高く掲げて、大声を上げた。
牟田と顔を合わせた雄大は頭をかいた。
「じゃあ…休憩に…」
と言いかけた時、後ろに気配を感じた。
「あの…これもいいんですか?」
雄大は大きく息を吸って、飲み込んだ。
「いらっしゃいませ!」
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