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向こうの通りにしおりをはさみました!
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向こうの通り
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どういう事だろう?
これって成康さんに知らせなきゃいけないのか?
でも成康さんが父親であるから、一緒にいたんだよね?
でもでもあの話じゃ、父親じゃないかもしれないって事だよね?
雄大は成康の会社を道を挟んだ所から見ながら、その場をぐるぐるしていた。
(でも2人は一緒にいたし…)
雄大はショボンと自分の影を見た。
目の前を車が通り過ぎて行く。
(どうしよう…)
迷いながら顔を上げると道の向こうで、暑い中でもピシッと歩いている成康がいた。
(やばい!)
雄大はすぐに顔を背けたが、すぐに大きな声で自分を呼ぶ声がした。
(逃げなきゃ!)
雄大がくるりと背を向けると大きな声で「危ない!!」と言う声が、雄大の後ろから聞こえた。
「…?」
振り向くと車の合間を縫って、成康が迷いもなく走ってきた。
「な、成康さん!?」
横から大きなトラックが走ってくるのが見えた。
「!!!」
雄大はギュッと目をつぶった。
クラクションの音が大きく聞こえた。
「…雄大君。」
肩に触れるものが手の感触だと分かった。
そろそろと目を開けるとまず紺のネクタイが見えた。次に大きく上下する胸が見えた。
「雄大君?」
「……….」
見上げると少し汗をかいて、息を整えながらも笑顔を作る成康がいた。
「成康…さん。。」
「よかった。」
はぁーっと雄大の両肩に手を乗せ、地面に向かって息を吐いた。
「なり…」
「暑いね。」
いつもと変わらなく接する成康に雄大は戸惑っていた。
黒田と一緒にいた時の成康とも違う。”ミサ”という女性と一緒にいた時とも違う。
どれが本当の成康なのかはわからないが、今、目の前にいるのは、初めて会った時と同じで優しい目でただ自分だけを澄んだキラキラした目で見つめてくる成康だ。
「どうしたの?」
「……」
頭にオレンジの色の服が浮かぶ。
(これを言えば成康さんは僕に戻ってくるだろうか?でも…全く確信のない事だし、ましてや本当に成康さんが父親なら、僕の方が邪魔モノだ…)
「雄大君、お昼食べた?」
「いえ…」
「じゃあ、一緒に。話したい事が…」
ブーブーブー
不意に成康の言葉が遮られた。
「ゴメンね。」
成康は雄大に申し訳なさ気に両手を合わせて、胸ポケットの携帯を取り出した。
「……」
画面を見た成康はすぐに硬い顔になった。
「成康さん?出ないの?」
「…ん…ああ…そうだね。」
「??」
成康は大きなため息をついて電話に出た。
「もしもし…うん…うん….いや。。」
(会社の人かな?)
雄大が少し離れようとすると、右手をギュッと握られた。
「??」
見上げると真剣な目で見つめてくる成康がいた。
雄大はその強い目に何度も瞬きをした。
「いや、ミサさん!急に…」
(ミサ!)
雄大はその場から逃げ出したかったが、右手をさらに強く握られた。
恐る恐る成康を見ると怖い顔で唇を噛んでいた。
しかし、パッと雄大と目が合うと少し微笑み、「分かった。すぐ行く。」と言って電話を切った。
(すぐ行くって…)
「成康さん…離して…」
(やっぱり…自分より”ミサ”を優先したのが、何よりの答えだ)
雄大は泣きたいのをグッと我慢して、歯を食いしばった。
「離してよ!」
成康は雄大の声を聞かずにズンズンと熱くなったアスファルトを進んで行った。
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