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一休み①にしおりをはさみました!
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一休み①
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巷はお盆休みなるものに入った。
異常な暑さも手伝って、客足も上々。
嫁さんからはお盆休みは実家に帰るから、休めと言われ、スタッフの子も帰省するから休みくれ、友達が帰ってくるから休みくれ。
いい加減にしてくれ!
「店長、本社から秋物届きましたけど、どこに展開しますか?」
頭を抱えていると段ボールを抱えた椿 雄大君が目の前に立った。
「あぁ、まだ売り場考えてなかったんだよね……それも考えなきゃなぁー。」
「じゃあ、とりあえずバックヤードに入れときます。あとで僕が夏物整理しときますんで、それから考えてみて下さい。」
悩む前に決断してくれる。
「ありがとう。」
「じゃあ入れときますね、」
雄大君のコロリっとした笑顔についつられて笑ってしまう。
あぁ…なんていい子だ……
雄大君にはいつも無理を言っているが、(たまに嫌な顔もしているが)よくやってくれる。
「時給上げたりしてあげたいけど…」
華奢な身体で段ボールを持ってバックヤードへ向かう背中を見送っていた。すると雄大君より頭、2つくらい背の高いバイトの上村君が近づいた。
上村君は雄大君の段ボールを取り上げようと手を伸ばしたが、雄大君はそれの手を払った。
しかし、上村君は諦めず、雄大君の手から段ボールを引っ張った。
しばらく、2人で段ボールを奪い合っていたが、最終的に段ボールを落としてしまった。一時、2人は固まっていたが、先に上村君が動き、段ボール持ち上げた。
雄大君は上村君が歩き出してようやく動き、上村君の後ろを何か抗議しながらついて行っていた。
「何してんだ…あいつら??」
私はレジカウンターに肘をついて、手に顎を乗せた。
「大体、上村君は大事な用があるからって、帰省する予定だったんじゃないのかな?急に出れるからシフト入れてくれって言われたけど…」
上村君はまだ大学生なのにとてもしっかりしている。
飲み込みが早く、無駄のなく、また半年くらいなのに頼りになる男の子だ。
それにとてもモテる。
まぁ、あのキリッとした強い瞳に高い鼻、少し焼けた肌に筋肉質の男らしい二の腕を見れば、野上さんや西川ちゃんが一目でアタックする理由はよくわかる。
「店長?」
「はっ!!」
「俺の腕、何か付いてます?」
上村君が自分の腕と見ようとしていた。
「い、いや!つい見惚れちゃって!」
「…見惚れちゃって?」
何の表情も見せぬままの上村君に手を振った。
「な、何でもない!」
「はぁ…」
「あっ、上村君さー、お盆大事な用がお家であるって言ってなかった?いや、こっちはさ、シフト困ってたから嬉しいんだけど、大丈夫かなーって思って。」
取って付けたような言葉を並べると上村君は「ああっ」っと思い出したように口を開いた。
「兄が婚約者?連れてくるって言ってました。」
「えぇっ!?」
「なんか来年の春、結婚するらしくって、その挨拶に来るそうです。」
「なふっ!!それってご実家帰らなきゃいけないよね!?凄い大事な用だよね!」
上村君は表情を変えず、一瞬だけ眉をピクリと動かした。
「全然。兄貴が誰と結婚しようが関係ないし。どうせ結婚式で会えるし。それにもしかして来年には破談になってる可能性もなきにしもあらずでしょう。」
「そんな事言っちゃ駄目だよ。」
必要以上にオロオロする私を尻目に上村君は急にウキウキとした笑顔を見せた。
「それより、お盆の間、椿さんの所も手伝ってもいいですか?」
「あっ…?」
「お盆の間、あのスーツ野郎も来ないし。今がチャンスかも…」
「ん?何?チャンス?」
首をかしげると上村君はまたまた珍しく爽やかに返した。
「いえ、今の台詞は気にしないで下さい。お盆は入荷も少ないし、野上さんの売り場はお盆明けでも大丈夫そうなんで!1番持ち場の多い椿さんだと思って。」
「で、でも…」
「お願いします!」
「…うん、わかった…」
頭を下げる上村君にすでに何も言えなくなった。
しかし、私には意外だった。なぜなら…
「2人は仲良いの?」
「仲…良い?」
「いや、2人はたまに衝突してたから。(と言うより、雄大君が怒ってたけど…)」
上村君は目を見開いて、しばらく考える。
「仲は…よくないと思います。でも、俺は仲良くなりたいです。1日の最後に俺だけの事を想ってくれるくらいになりたいです。」
上村君は目をキラキラと輝かせ語るものだから、余程、仲良くなりたいのだろう。
「ふーん。。(俺だけ?想う?)じゃあプライベートでも仲良くなりたいんだ。どっか誘ったら?」
「そのつもりです。今がチャンス、相手を気にせず落とすつもりです。」
不適の笑いを浮かべて去っていく上村君。
「チャンス…って?相手?」
売り場にいた雄大君の肩がビクッと揺れた。
その後ろから上村君が、雄大君に耳打ちしている。
「なんかまだ一悶着ありそうな2人だな…」
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