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夏の陣?にしおりをはさみました!
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夏の陣?
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「いらっしゃいませ。2つですね。」
低くて心に沁みるような声。
顔に細かい冷たい何かがかかる。
薄く目を開けると遠くに鮮やかな黄色の法被が見えた。
その背中に懐かしさを覚える。
「あっ…」
「おっ!目を覚ました?おい!加藤!」
黄色の法被が振り向いて、雄大の元へ駆け寄ってきた。
(夢…?)
「雄大君!?」
頭を抱えられ、その膝に頭を乗せられた。
ぼやけた視界が徐々にはっきりとしてくる。
「な、成康…さん?」
「よかった。あっ、黒田さん、ちょっと店番してて下さい。商品は作りましたんで。」
「なんで俺が!?」
「く、黒田さん…」
はっきりしてくると隣にいつもとは違って、整髪料のついていないラフな髪の黒田がいた。
「さっきから若い女の子が買いに来ています。どうもここにイケメンが焼きそばを焼いているって言う噂が流れて、若い子が来ているみたいです。」
「ちょっと行ってくるわ。」
雄大が身体を起こそうとすると、
「寝てろよ、ガキンチョ!!虚弱体質は夏男にはなれねぇぞ!」
黒田はヒャホウっといった勢いで大声で呼び込みをしていた。
「きょ、虚弱体質……わっ!」
顔にさっきと同じ冷たいかけらがかかった。
「氷?」
成康の手にはかき氷のカップが握られていて、そのカップから半透明の細かい氷が雄大にかけられた。
「かき氷屋さんにシロップなしで作ってもらったんだ。」
成康は残った氷をタオルに包み、雄大の首筋に当てられた。
「冷たい……」
ふいっーと雄大は息を吐いて、目を閉じた。
「ほら、ダメだよ。ちゃんと水分補給しないと。」
「うん…」
まだ頭がボッーとする。ヒンヤリとした冷たさが心地よい。
「…口移しで飲ませようか?」
甘ったるいような声が耳元でして、雄大は目を見開いた。
「あっ、残念。」
成康はパッと顔を引いて、雄大の唇にペットボトルの口を当てた。
「はい、飲んで。」
影になった成康の顔が30センチも満たない場所にある。
(この角度はなかなか見ることのできない角度だ)
完璧に整った顔につい見惚れてしまいそうになった。
プハッと息をついた頃には頭はなんとか持ち直したが、身体はきつく、だるかった。
「大丈夫?」
「はっ、はい。。」
雄大が身体を起こそうとすると成康はそれを手伝い、雄大の肩を抱いた。
「…でもどうして成康さんたちはここに?」
「ん?あぁ、実は注文していたパソコンを取りに来たんだ。それでその途中でここを通った時に黒田さんが雄大君を見つけたんだ。見たらボッーとして、問いかけにもボッーしてると思ったら、倒れたんだよ。ほら、飲んで。」
(何だろう……)
雄大は成康の手ならスポーツ飲料を飲んだ。
成康はいつも凄いタイミングで、予想もせず現れ、自分を助けてくれる。
その偶然が運命のようにも感じる。
(これが運命の人?)
雄大は手を伸ばして、成康の頬に触れた。
「お土産、たくさん買って来たから。うちの家に取りに来てくれる?」
珍しく甘えるような成康の声が降ってきた。
「う…」
「ちょっと!!?」
大きな声がした。
成康が眉をひそめて、顔を上げて遠くを見つめている姿が下から見えた。
「??」
雄大が顔を成康の視線の先に持って行こうとした時、グイッと身体が引っ張られた。
「何してるんですか?」
「う、上村君?」
怒ったような顔の上村が、雄大の上半身を自分の両腕で抱えた。
「熱中症だよ。今から念のために病院に連れて行くから。」
手を伸ばす成康の手を上村が払った。
「うちのスタッフです!うちで連れて行きます!」
「とにかくここに置いてはおけない。君は店長さんに連絡して、雄大君は店の中に入れるんだ。」
上村は成康に渡すまいと雄大をギュッと胸で抱えた。
「あんたには渡さない。」
「う、うえ…」
雄大は何とか声だけだしたが、上手く舌が回らなかった。
成康に助けを求め見ると、今にも噛みつきそうな怖い目が上村に向けられていた。
「君は…俺に戦線布告でもしてるつもりかい?」
威圧的な成康を雄大はぽかんと見つめた。
「あぁ…そのつもりだ。」
上村も負けじとギッと成康を睨んだ。
成康の心が少し見えそうで嬉しかったが……
(この状況、どうなるんだ…??)
睨む合う2人の間で何かが勃発したのは明らかだった。
「おい、誰か焼きそば焼いてくれ!なんか体育会系の人達が来たぞ!?」
黒田さんの声は誰にも届いてないようだった。
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