アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
訪問先でインターフォンにしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
訪問先でインターフォン
-
「く、黒田さん?ここで…いいんですよね?」
成康はケーキ屋の箱を腕に下げ、携帯を耳に当てたまま、二階建ての住宅の前で立ちすくんでいた。
『あっ?住所の番地なんだろう?』
「で、でも…普通の家ですよ?」
『あーーー…表札見たら、間違いないぜ。じゃ、今からレース始まるから、切るぜ。もうかけてくんなよ。」
「ちょっ!黒田さん!!」
『あと、相手は相当困ってるんだから、ちゃんと訪問しろよ、じゃあな。』
「くろ…」
プープープー
「あっ…まじか…」
成康はため息をついて、携帯をポケットに入れた。
周りを見渡しながら、住宅街には不釣り合いなスーツ姿で、住所の家のローマ字の表札に目をやった。
”TUBAKI”
(椿!?)
全身が泡立つのがわかった。
(….椿…くん?)
可愛らしい木の表札。
鉄の門扉の向こうには、アイボリーの壁に茶色の屋根が乗った家がちょこんと建っていた。
(昔、妹が持っていたうさぎファミリーの家みたいだ。。)
成康はかなり躊躇した。
家の前の道路をウロウロしたり、駐車場を覗くと車は停まってなかった。
(誰もいないのかな?)
家からは何の音もせず、誰かの気配はなかった。
”相当困ってる”
黒田の言葉が引っかかる。
冬が近いのに昼間の外の太陽は、成康の持っていた箱を重くした。
(これだけでも…)
黒田の言葉と手土産が成康の誘惑心を煽った。
キィッ
鉄の門扉を開けると小さな庭が成康を迎えた。
緑の芝生に赤い小さな花、背の低い木が植えられ、庭は綺麗に手入れされていた。
その小さな庭に成康は何とも言えない高揚感を味わった。
(ここで雄大くんは…)
一歩、玄関に近づくたびに心臓が大きな音を立てた。
ドキドキドキドキ
手に汗をかく。
中からは何の音もしない。
(留守?)
成康は2階建ての家を見上げた。
1階はどの窓も開いてなかったが、2階のある一室の窓のカーテンがふわりと揺れた。
成康は心臓の音に負けそうになりながら、左にあったカメラが付いていないインターフォンに人差し指を伸ばした。
ピンポーーン
高い音が静かさを打ち消す。
しばらく、何の音もしなかった。
ドスドス…ドスドス
重たい足音が外まで聞こえてくる。
ガチャリ
こんなに緊張した瞬間は就活の面接の時しかなかった。
キッと小さな音を立たながら、茶色の木の玄関ドアが動いた。
「…はい?」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
115 / 147