アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
-
次の日、奏の部屋に連れて来てもらった
二人きりになって何だか気まずい
だって、奏が今傍に居て欲しいのは俺じゃなくてもう一人の空だから
「どうした?」
「ごめんね」
「いきなりなんだ」
「ここにいるのは俺じゃなくて本当の空ならよかったね」
「あの時は驚かせてすまなかった、お前が悪いわけじゃないし気にしなくてもいい」
「でも怪我を」
「掠り傷だ、それと・・・もう空と自分を比べたりするな」
「・・・・・・・・」
「俺も考えを変えるよ・・・きっと空は生きている、必ず戻ってくるはずだ」
「そうだね」
もし本物の空が戻ってきたら俺はどうなるんだろう
「その服、似合ってるな」
「えっ?」
「すごく可愛い」
「楓が用意してくれたんだ」
「そうか」
今まで可愛いと言われてもムカつくだけだったのに、なんだか嬉しい
「空」
「何?」
「髪に糸くずがついていた」
「そか」
髪に触れられただけでドキドキするなんておかしい
と言うか、俺がおかしい
「そうだ!あのね、バンドの事聞いたよ」
「そうか」
「楓も凱もすごく上手だった・・・でね」
「ああ」
「奏が歌を?」
「まぁな」
やはりあの時の歌は奏だったんだ
「すまない、水を」
「うん・・・」
魔法はいけない
でも、奏を元気にする魔法なら
ばれないように水に魔法をかけた
でもばればれだ・・・七色の水になってるし
「はい」
「・・・・・・・・・これは?」
「俺達の世界で飲んでいる水・・・魔法はいけないと言われたけど、もう少し知って欲しくて、絶対害は無いよ」
渡したグラスを見つめながら微笑む奏
髪が七色に光って綺麗
「美しいものだな・・・透明が一番美しいと思っていたが水の中に虹がかかっているようだ」
そう言って飲み干した
「味は水だ・・・」
「うん」
「でも、なんだか元気になれる水だな」
「だよ?・・・あっ!」
「いいよ、俺と二人きりの時は魔法を使っても・・・ただしいい魔法だけだ」
「うん、もちろん・・・じゃ、この部屋を花畑にしてもいい?」
「ああ」
「こんな感じで」
「すごいな」
一面の花畑
綺麗な蝶も呼んだ
「ところで魔法使いはどんな種類があるんだ?」
「音楽魔法とか、戦闘魔法とか・・でもそういう魔法は位の高い人しか使えないし覚えられないんだ」
「成程」
「あと、動物使いもいてね、でも俺達の国には動物使いがいないから不利なんだって」
「お前は?」
「俺も動物は使えるけど戦いに使えるような強い魔法じゃないから」
「錬金とかもいるらしいな」
「うん、普通にいるよ、ドラゴンも」
「ドラゴン・・・おもしろい世界だな」
「でも・・・・・」
「どうした?」
「貧富の差がありすぎてこんなお城に近付くなんて夢のまた夢なんだ・・ほとんどが俺達のような貧乏人で毎日生きて行くのすら必死で、貴族の捨てたごみを漁って生きてる」
「ごみを?」
「うん、でも取り合いだからさ・・・俺は体を売ってたかな」
「えっ?」
「貴族のおもちゃ、でもたくさんお金はくれるしね」
「お前・・・」
「そうでもしなければ生きていけないんだ」
「・・・・・・・・・・・・空」
えっ?
突然抱きしめられた
どうして?
「王子は何もしないのか?」
「わからない・・・でも俺達の国の王子も奏のような人だったら・・・きっと」
「俺も大した王子じゃないよ、国をよくしたのは空だ」
「そうなんだ」
「毎日町に出て、いろんな人々と会話して情勢を知る」
「だからこの国は平和なんだね・・・」
「今は不安かも知れないが空が消えてお前がここに来た理由がありそうだ」
「理由?」
「ああ、だから何も心配するな・・・お前は俺が護る」
「・・・・・うん」
「いいかな?」
楓だ
どうしよう、魔法使った事がばれちゃう
慌てて椅子に戻りドアを見つめた
「いつの間に模様替えを?」
「今だ」
「成程、この部屋なら綺麗だし健康そうだね」
怒る気配はない
よかった
「どうした?」
「うん、パーティーで空を襲ったのはやはり隣国の人間だった」
「やはりな」
「どうする?」
「最近うちの国の石油を狙っている話は本当だったらしいな」
「だね、仕掛ける?」
「同じ事があったら厄介だし警告は必要かもな」
「わかった、じゃ今から」
「ああ」
何の話だろう
石油って何かな
「すまなかった」
「ううん、楓はどこへ?」
「隣国にね」
「何をしに?」
「脅しかな」
「えっ・・・」
脅しって・・・・・
「この国では戦争は無いが水面下では楓が動いているんだよ」
「なんだかすごい人だね」
「怒らせないようにな」
「う、うん」
「冗談だ」
そう言って頭を撫でてくれた
この手・・・好きかも
「模様替えをしてくれたお礼をしないとな」
「そんなのいいよ・・・でも」
「ん?」
「歌が聴きたいかな」
「歌か」
「無理ならいいんだ、怪我してるし」
「じゃ、こんな歌はどうだ?」
そう言って本当に歌ってくれた
言葉はわからないけどすごく胸が熱くなるような歌だった
やはりこの声だ
とても綺麗な歌声
「どうした?」
「何でも無い・・・悲しくないけど涙が」
「そうか」
そっと涙を指で拭いながら微笑んだ奏
こんな人に愛される空
俺じゃなくて、ここにいない人
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
37 / 55