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鏡を見つめ、溜息をついた
「空はどう?」
「眠れないまま朝になったよ」
「と言う事は奏も寝ていないんだね」
「俺はどうすればいいんだろうな」
「泣き言?」
「黙れ」
「まずは貧富の差を何とかしないとね」
「簡単ではなさそうだな」
「まぁね」
「と言うか、どうして貧富の差がこんなにも激しいんだ?」
「全く気付かないとはおめでたい国王だね」
「・・・・・・」
「その目で確かめてみたら?」
「どうやって?俺は焼かれたら死ぬぞ」
「変装かな」
「変装?」
「まず、その綺麗な服を脱いでこれに着替える」
楓に渡された服は変な匂いがした
「本気か?」
「もちろん」
「わかった」
大丈夫なのか?
臭いし湿っているし怖いな
「着たぞ」
「じゃ、これで顔を汚して」
「えっ」
「毎日お風呂に入れるのはごく一部の人間だと言う事をお忘れなく」
「わかった」
「ちなみに、服も炭も魔法で作った物だから病気にはならないよ」
「そうか」
少し安心しながら顔を汚した
「髪もね」
「ああ」
「宝飾品は全て外して」
「指輪もか?」
「もちろん、今から行く場所はこの国の最低レベルだからね」
「わかった」
全ての装飾品を外し、テーブルの上に置いた
「じゃ、俺も着替えるから」
「ああ」
楓も同じような服を着て顔を汚した
「手馴れてるな」
「そう?」
「でもこの格好で城内は歩けないだろ?」
「着いて来て」
「わかった」
そのまま地下に向かい、床を開けた
「こんな所に抜け道が?」
「あるんだよね、知らなかった?」
「ああ」
「じゃ、行こう」
「真っ暗だな」
「そのうち目が慣れるよ」
「そう願いたいね」
しばらく歩くと、目が慣れて来た
しかし薄気味悪い所だ
匂いも強烈だし吐きそうだ
「もうギブ?」
「まさか」
俺は何のためにこんな事までして?
考えなくてもわかる
空の為だ
「かなり歩いたな」
「もうすぐだよ」
「ああ」
楓はしばらく様子を見て小さなドアを開けた
「出て」
「わかった」
もう匂いも気にならなくなって来た
外に出ても暗いまま
生きているのか死んでいるのかわからない人間が地面に座っていた
「この先に面白い店があるんだ」
「店?」
「うん」
ひとつのパンを奪い合い喧嘩する人々
子供の泣き声と叫び声
本当に同じ国の中なのかと疑いたくなる光景だった
「ここだよ」
「ここは?」
「闇でやってる酒場みたいなものかな」
「詳しいな」
「入って」
「ああ」
古びたドアを開けると、かすかに明かりがあった
「あいつだけ雰囲気が違うがここの人間なのか?」
「貴族だね」
「貴族達がここで何を?」
「見ていればわかる」
そのまま椅子に座り言われた通りに様子を見る事にした
「今日はいい子が揃っていますよ」
そう言いながら鎖に繋がれた若い男を連れて来た
「いくらだ?」
「それはプレイ次第でかわりますね」
「そうだな・・・じゃこいつを」
「かしこまりました」
「あいつらは自分の意思でここにいるのか?」
「親に売られたりいろいろだね」
「いくらなんだ?」
「死ぬ間際までのプレイなら一週間生き延びられるぐらいかな」
「・・・・・・・」
「あいつは自分の為にこの店をやっているんだよ、そして売り上げのほとんどを持って行く」
「胸糞悪いな」
「出よう」
「ああ」
また暗い道を歩き、路地裏に入った
誰かいる
数人が何か話をしていた
「久しぶり」
「楓、死んだと思っていたよ」
「死にかけてたかな」
「そうか、とにかくよかった」
「だね」
おいおい、楓は一人で行動していたのか?
昨日今日の知り合いでは無さそうだ
「それで、そいつは?」
「彼に助けてもらったんだ、命の恩人かな」
「そうかそうか、よろしくな」
「よろしく」
「しかし、どうしてあいつは死ななかったんだろうな」
空の話か?
思わず殴りそうな手を楓に掴まれた
「死ねばよかったのに、王族なんて無くなればいい」
「そうだね、わかるよ」
「そう言えば城から出て来た男が楓に似ていたな」
「それは喜ぶべき?」
「いや、悲しむべきだな」
「同感」
「お前もそう思うだろ?」
ここは話を合わせた方がよさそうだから頷いた
「国王とは名ばかり、俺達のような貧民からも税金を絞り取る」
「満足な食料も無い、食物を作る事も許されない、死ねと言っているのか?」
「うちの子供はもう二人飢えで死んだ、仕事も無いしここは生き地獄だよ」
「国を出ようにも船がないし見つかれば死罪だ」
「若い娘や男は貴族になぶりものにされても泣くしかない、年寄りは死ぬのを待つしかない、あいつらは狂ってる」
「どうすればいいんだろうね」
「俺達にも議会に出る権利を与えて欲しいね、貴族だけではなく国のみんなにも」
「そうすれば解決策が見つかるのかな?」
「直に国王の耳で聞いてもらいたいよ、俺達の叫びをね」
「成程」
テーブルにはカビの生えたパン
それを食べながら話をする奴ら
「じゃ、俺はそろそろ行くね」
「ああ、また来いよ」
「そうだ、これを」
そう言って使い古したろうそくを置いた
「助かるよ」
「拾ったものだから気にしないで」
「楓のような人間が国王になればこの国も変わっていたのに」
「それはどうかな、お金に溺れてしまうかも」
「それはないだろ?女にも溺れないんだからさ」
「だね、じゃ」
「ああ」
複雑だ
金には溺れないが俺は今まで何をしていたんだ?
空が来るまでは何もしないで男と遊ぶ毎日だった
「耳が痛いね」
「黙れ、と言うかお前」
「情報収集かな」
「成程ね」
「信用させるのに時間がかかったけどね」
「だろうな」
こいつ、裏で動いていたのか
全く気付かなかった
さすがというか、敵には回したくない男だな
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