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風雲急にしおりをはさみました!
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風雲急
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とりあえずいつも通り仕事をこなして、今日は行けないと奏太に言われたのに、それでもロビーで奏太の事を待つ。
7時まで待って諦めた。何回か電話を入れたが繋がらない。
仕方なくいつもの電車で自宅へと帰る。そして家に帰るとまた携帯を取り出した。
今日のあいつはおかしかった。携帯を取り出すと、また奏太に電話をかける。呼び出し音はちゃんとなっている。しかし奏太への電話は繋がる事は無かった。
「またなのか。」思わず口をついて出た自分の言葉に驚愕する。え?俺はまた奏太を失うと言う事か?
何をする気にもなれず、TVをつけ缶ビールを冷蔵庫から取り出す。帰りにコンビニで買った唐揚げ弁当をビールで流し込む。
「・・製薬の元会長秘書が・・・捜査の手は・・・。」どっかの企業の元従業員の使い込みだとか俺には全く関係のないニュースがテレビで流れている。
いつもある日常の光景だ。チャンネルを変えようと画面にリモコンを向けた。
その時、画面に映る初老の男性の顔に何故か見覚えがあるような気がした。
「権藤さん、秘書の長谷川さんの使い込みをご存知だったという噂がありますが・・・・」
テレビレポーターの質問を大仰に手を降って払いのけるその姿に妙な既視感がある。知り合いのはずはない。製薬会社など、取引外だ。
なのに何かが引っかかる。ああ、この気持ち悪さには思い当たるところがある。夢の黒い霧の中にいる時の感覚だ。
まさか。まさかと思いつつも気持ち悪さはだんだんと増していく。もしかすると夢が見せていたものは、母親からのメールや電話じゃなかったのかもしれない。俺に急を告げていたのは何か違ったものだのか。
携帯を取り出すと、自分からはかけることは無いと思っていた番号を呼び出した。
「もしもし、大野?ごめん遅くに。違う、違う。飲みの誘いじゃない。お前さ、尾上の住んでる場所どこか知ってるか?・・・そうだよな。じゃあ、尾上ってさたしか誰かのコネ入社だったって言ってなかったっけ。・・・えっ?違うよ。秘書課の子じゃない。・・・・そうか。うん。ありがとう。」
奏太は製薬会社のお偉いさんのコネで入社したと大野は言っていた。その時、古い記憶がバラバラと降り注ぐ大粒の雨のように落ちてきた。
奏太を偶然見つけたあのホテルで一緒にいた男。奏太の頬を愛しそうに撫でた男。
一瞬だったが、強烈に俺の中に残った印象。間違いない。奏太は・・・奏太は今どこにいるんだ。
嫌な汗が背中を伝った。もう一度、奏太の番号を呼び出す。
誰も出ない。メッセージを預かると言う機械のメッセージが無情に響くだけ。
「奏太!電話してくれ。話がしたい。俺はお前が今どこにいるかさえ知らないんだ。頼む、連絡をくれ。」
メッセージを残したが、その夜折り返しの電話がかかってくることはなかった。
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