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Ⅲ ~ バレンタイン Side佑にしおりをはさみました!
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Ⅲ ~ バレンタイン Side佑
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2年越しの、お久しぶり番外編です。
『Ⅱ ~ バレンタイン』の佑視点のお話です。
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憂鬱だ。
今日は、特に。
「蔵田くん、今ちょっと時間いいかなー?」
「あ、いーよ、すぐ行く」
あ、また呼ばれてる。
声を掛けられた女子学生と教室を出て行く和樹の後ろ姿を見送ると、周りの人に分からないくらいの小さな溜息をつく。
ズキ、と感じた鈍い胸の痛みに気付かないフリをして、無理矢理目を背けた。
今日は2月14日、バレンタインデー。
女の子が男の子に気持ちを伝える、年に1度の特別な日。
佑の気持ちを沈ませるのは、春のキャンプで和樹に打ち明けられた“好きな人”の存在だ。
和樹は少し人見知りで慣れるまでは殆ど話さないため、冷たいと誤解されがちだが、お世辞抜きで性格は良いし、男の自分から見てもかっこいいのでモテる。
普段から声を掛けられることは多いが、今日は特に回数が多く、呼ばれる度に綺麗なラッピングがされた箱やら紙袋やらを持って戻ってきた。
本人曰く、どうしてもと貰ったらお返しはする主義らしく、告白は断った子にもホワイトデーにきちんとお礼をするつもりらしい。
もし告白してきた女子の中に和樹の好きな人がいれば、2人は付き合うことになるだろう。
和樹が幸せならばそれより嬉しい事は無いはずなのに、どうしても胸の奥がズキズキと痛む。
「あの、江咲くん」
「あ、長谷さん。おはよう」
「おはようございますっ!あ、あの、これ」
唯が差し出したのは、手作りだろうか、綺麗にラッピングされたチョコレート。
告白を断った身で受け取ってしまって良いのだろうかと、佑は少し迷った。
「あ、ありがとう。でも俺、その…一度断ってる、し」
「大丈夫です。もう気持ちは吹っ切れてるんです!甘い物が好きって聞いたから…だからお友達として、貰ってもらえませんか?」
「甘い物は好きだけど…いいの?」
「勿論です!」
ありがとう、と受け取れば、唯は嬉しそうに顔を綻ばせる。
ちゃんとお礼はさせて欲しいと伝えれば、そんなに気を遣わないで!と慌てられてしまった。
最初は慣れなかった唯との会話も、最近では慣れてきたような気がする。
その後少しだけ話して、唯は友人の元へと戻って行った。
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