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仲間と一緒!にしおりをはさみました!
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仲間と一緒!
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教室には男女が入り交じっていた。
一つの机に数人の生徒が集まり、楽しそうに会話をしている。
大半はやはり持ち越した友人たちと話しているようだが、意外にも初対面同士で打ち解けている印象が強い。
ハルトが邪魔しなければ、俺も今頃は「どこのクラスから来たの?」って初々しい会話ができてたのに!
恨みがましげな視線をハルトに送ったが、また鼻で笑われた。
教室の中に入ると、大量の視線に晒される。
シュウ達を見た生徒は、数秒彼らの全身をじっとり眺めたあと、何事もなかったかのように会話に戻る。
そのなかに、ポツリポツリと彼らの話題も混ぜられていた。
悪評などではなく、何の考えもなく話の種にされているだけなので気にせずシュウも教室へ足を踏み入れる。
新しくかけられたワックスの香りが鼻孔を擽る。
するとどこに陣取るか悩んでいた彼らに、教室の隅っこから声がかけられた。
「おーいハルト!シュウ!こっちこいー」
茶髪の男子が笑顔で手を降ってくれた。若干ホッとしつつ、彼が座っている席に歩み寄る。
そのほかに、髪の毛を二つくくりにしたのと小生意気そうな少年と、黒髪の大人しそうな少年。
「校長の話長かったよなー俺、寝かけた!」
「リョウも?俺は半分寝てたよ!」
茶髪の男子、リョウは同意してくるシュウに向かって元気な笑顔を向けた。
リョウの太陽のような笑顔は曇ることなく、いつもシュウを明るくさせてくれる。
落ち込んでいるときや、ちょっとイライラしているときに彼の微笑みを見ているだけで荒んだ心が癒されるようだ。
「それにしてもシュウのくしゃみすごかったなー滅茶苦茶大きかったぞ!」
「はん。聞いてるこっちが恥ずかしかったぜ」
隠すことなく馬鹿にしてくる生意気な少年、サガラはシュウを鼻で笑った。
サガラはすこし伸びた髪の毛を二つくくりにしている。身長は小さめで、愛らしい顔立ちをしているが、結構毒舌家だ。それは友人のユツキに対してはよりいっそうひどくなる。何故か学ランを着ているが、この学園はブレザーなので何度か注意を受けている姿を見かけたが、直す気はさらさらないようだ。
それにしても今日はよく笑われる日だな。
シュウは小さく肩をおとした。
「サガラ」
低い声が彼らの空気を揺らす。
名前を呼ばれたサガラは、声を発した黒髪の男子に目をやる。
黒髪の青年、ユツキは黙っていた口を珍しく開いた。彼も学ランを羽織っている。
だらしなく下げていた腕を胸の前で組んだので、静かな威圧感をひしひしと感じさせる。
ユツキのほうは濡れたカラスの羽のような色をした綺麗な黒髪を一つにくくっている。表情はないに等しいが、サガラにだけ時たま淡い微笑みをみせる。
まぁ何が言いたいかというと。
「なんだよユツキ!」
たどたどしく言葉を紡いだユツキに、シュウの目がきりりとつりあがった。
「人をバカにするのは、よくない」
「バカになんかしてねーし!俺なりの誉め言葉だ!」
「お前はどんだけ誉めるのが下手なんだよ!」
更に貶められたシュウは思わず叫ぶ。
だがサガラに一睨みされただけで流された。
「大体さーユツキは俺のこと気にしすぎなんだよ!オカンかお前は!」
「気にしないほうが、いいか?」
せつなげに視線を床に落とすユツキに、サガラは頬を染めて握りこぶしを作った。
「んなこと言ってねーだろ!むしろもっと気にかけろっつーの!」
可愛い。
ユツキの心の声がもれてきたような気がする。
もしそう本気で思っていたなら、大した溺愛ぶりだ。
いつもは曇っているユツキの瞳が、心なしか輝いたように見える。
ぷんすか真っ赤になりつつ、サガラはちゃっかりユツキの膝の上に乗った。
思いがけない行動に、回りの生徒たちがざわめくが、シュウ達は無反応だ。
彼らもこの一年間できっと慣れてくれるだろう。
要するに彼らは周囲も認めるラブラブカップルであり、みてるこっちが火傷しそうである。
小柄なサガラの髪を人形をいじるようになで回すユツキはどこか満足そうだ。
「えーそこのバカップルは放っておいてー」
「だっ誰がバカだこのやろう!」
カップルの方は否定せず怒るサガラに、リョウはにこやかに微笑んでまたシュウに向き直る。
「同じクラスになれてよかった!お前らとまた一緒にバカなことやれると思ったら、もうすごく嬉しいぞ!」
「バカみたいなことを喚くな」
そう言いつつもハルトもすこし浮かれているようだ。
仲がよかったこの四人で、再び一年間を共に過ごせる。
そう考えるだけで、先の未来が明るくなった。
どんなことがあっても彼らがいれば自分は笑っていられる。
絶対の自信がシュウにはあった。
シュウの横に立っているハルトの口が微かに動いた。
「…まあ、俺はこいつがいればいいけどな」
そんなハルトの呟きは、教師が教室に入ってきた音にかき消されてしまった。
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