アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
color-4にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
color-4
-
お風呂からあがったきいろは、池の水臭い匂いも取れ、石鹸の甘い匂いがした。
タオルで髪を拭きながら、きいろは冷蔵庫をあさり、ジャムをとりだして食パンを二枚皿に並べた。
「みどり、ご飯食べたの?」
椅子に座り、テーブルのカメの甲羅を触っている俺にきいろは問いかけた。
「食べたよ、講義のまえに。食堂で。きいろ食べたって連絡くれなかったっけ?」
俺のスマホには、最終の講義のまえに食べたからご飯はいらないとメッセージがきていた。
この家の家事はほぼ俺がしていたから、晩御飯は俺がいつも作っている。
もとから、料理をするのは好きだったし、きいろはいつも褒めてくれて、作るのも楽しかった。
「食べたんだ。たくさん。けど、またお腹が空いてしまった」
きいろは薄い体に反して、世間の男子よりも食べるほうだった。といっても、日によってまちまちで全く食べないときもある。
きいろは、赤いいちごジャムをとりだして、食パンにべたべたと塗りつけた。
「知ってる?みどり。かき氷ってどれもおなじ味なんだよ。見た目でみんな騙されてるんだ」
きいろは、2枚の食パンをもそもそ食べながら言った。食べるのが下手なきいろは、口の周りにジャムがついていた。そのジャムを舐めてとりたい衝動を抑える。
「知ってた。着色料のせいかな」
「さすがみどり。みどりは何にも騙されないね」
「けど、いいとこの高いかき氷は本当に果汁からとってるだろ」
「さぁ?分かんない。俺はお祭りの安いかき氷のが好きだけどね」
そう言ってこの話に飽きたのかきいろは、チャンネルを手に取りテレビをつけた。
どこか南米の国のリゾートを取り上げ、それに芸能人がクイズ方式で参加している。
俺は全くもってテレビに興味がなかった。
「どこか遠いところにいきたいね」
きいろの声はかろうじて聞き取れた。
その瞳に陰がさしていることを知っているのに、二人でどこかに誰も知らないところに行こうと言えないのは何故なのか。
きいろは、近くていつも遠かった。
遠いからこそ、誰よりも近くにいて守ってそばにいたい。
きいろは、空気の存在であってほしい。
当たり前に存在しているのに、なくなっては死んでしまうような。いや、すでにきいろは俺にとっての空気だ。きいろが当たり前になってほしい。いつまでも。きいろにも俺という存在がそうであってほしい。
俺のきいろへの感情は、いつだって報われない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 329