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高校生活にしおりをはさみました!
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高校生活
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俺の名前がみどりだと知るときいろはびっくりしたように、運命だねと言った。
きいろはこの街に引っ越してきたばかりで、今まで東京に住んでいたらしい。
俺は、まだきいろの容姿に慣れていなくて、男なのにどきどきとしてしまう。
どこのお店が美味しいとか、遊ぶならここだとか、普段の母親並に話していた。
人も増えてきて、ざわざわと騒がしくなった。
運命なことに俺たちは同じクラスだった。
きいろはその美貌から注目を浴びていた。けれど、本人は全く気にしていない。
通りかかる女の子は、きいろを見て騒ぎ、男子は女の子だと見違えた。
あらゆる行事を終えて、教室に案内される。
教科書を配布される。持ち帰るのは重そうだ。みんな文句を言っていた。
「みどり、油性のマジック貸して」
きいろは俺から借りたマジックで教科書に大きくきいろと書いた。
さすがにいじめのシーンでよく見る嫌がらせの一種みたいで、俺は慌ててとめようとした。
「こうやって書いとけば誰も間違えない」
きいろはにこにこしながら、全ての教科書を机に突っ込んだ。
「重くて持って帰るのだるいから、全部おいて帰るよ」
いわゆる、初日からの置き勉。きいろは強メンタルだった。
きいろは、大勢のクラスメイトに囲まれていた。モデルをやってるの?とか、ちゃんとついてるの?とか。きいろは、テキトーにうんうんと答えていた。困ったように俺に視線を寄越す。
昼休みのチャイムがなる。きいろはやっと逃れられると、立ち上がり、俺に声をかけた。
「みどり、お昼たべよ」
きいろと食べたかったのであろうクラスメイトは残念そうに散って行った。
てっきり教室で食べると思っていたからどこに行くのかと不安になった。俺たち新入生にとって購買や食堂は未知数の場所。俺は初日からお弁当なことに少し残念に思う。
きいろは、コンビニの袋を提げていた。
「屋上で食べるの夢だったんだ」
まさかの屋上。きっとヤンキーの溜まり場とか考えたら恐怖で震えた。柔道を小さい時から習っていたが、喧嘩などもってのほかだ。
渋る俺と違い、きいろは嬉しそうに廊下を歩く。
そして、あろうことか、俺の手をつかむとぐいぐい進んでいった。
すれ違う生徒が騒ぐのが聞こえた。
屋上の扉を開くと、柄の悪い連中が案の定いた。おそらく上級生だ。体の小さいきいろをどう守って逃げようか、頭をフル回転させた。
「やめとこ、きいろ。まちがえましたって帰ろ」
錆び付いた扉を開ける音で、目つきの悪い男や女の先輩が一斉にこっちを向いた。
きいろは、俺の手をつかんだまま、ぐんぐん進む。
「なんだ、お前ら。」
図体のでかい先輩が声をかけてくる。髪を金髪に染め、ピアスをし、蛇のような顔をしていた。ザ 不良とはこの人だ。俺はかたかた震えた。
その人は、きいろを見下ろし、にやりと笑った。
「なに、お嬢ちゃん。遊ぼってか?それとも可愛がってほしいって」
「屋上で食べたいんです。」
きいろはきっぱりと言うと、挑むように笑った。
「ここは、俺たちのテリトリーなの。けど、お前が接待してくれるならいいよ」
そう言うと、周りの連中も下品に笑いだした。
「屋上があんたのものとか誰が決めたの?」
きいろは不思議そうに首を傾げた。
怒った男は、きいろの胸ぐらをつかもうとした。俺は咄嗟に庇おうと前に出る。
「ひいっ!!」
急に男は尻餅を着く。きいろは、袋をかかげて笑った。
「接待はできないけど、お土産はあるよ」
きいろの袋のなかには、毛虫がいっぱいはいっていた。
尻餅をついた、男をみて周りが怒ったかのように怒声をあげた。俺はもう諦めの境地に立っていた。あぁ、初日からサンドバッグか。
「お前ら、やめろ」
尻餅をついた男は佐々木 光と名乗った。
二つ上の先輩だという。
聞けば、この学校のヤンキーのボスならしい。
ただし、大の虫嫌いだそうな。
なぜか、きいろの度胸を気に入り、屋上での食事を許可してくれた。
「まさか、虫嫌いって知ってたの?」
俺が問うときいろは、「桜の木に毛虫がこんなにいたら危険だから取っただけ」と答えた。
桜の木の下で眠っていたら見つけたらしい。俺は、ハラハラして気が気でなかったときいろを軽く叩いた。
佐々木先輩は意外といいひとだった。
喧嘩は強く、人情味あついが、弱点は虫。
がちがちにびびる俺にもジュースをおごってくれた。
「お前たち、度胸あるなぁ。どうだ、仲間にならないか?」
佐々木の仲間たちが声をかけてくる。
きいろは、市販のメロンパンをもぐもぐと食べていた。
「時たま、屋上で食べさせてくれたらそれだけでいいですよ」
きいろは、天使のような微笑みで返す。その微笑みにみんな虜になっていた。
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