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「きいろ、1度実家に帰らない?」
みどりは、きいろに問いかける。
「いかない」
きいろは、彼の顔も見ずに言った。
「いかないと、かぼちゃのスープもう作ってやんない。きいろ、倒れても知らない」
「行きたくないけど、かぼちゃのスープは飲むし、倒れたりもしない」
きいろは、まるで駄々をこねる子供だ。
「来週いこうね。準備俺がするから」
きいろは、みどりの言葉を無視した。
きいろは、返事をすることなく、ため息をつき、自室に戻る。
憂鬱とはこのことだ。身体が思うように動かない。毎晩、同じ夢をみて魘される。幼いきいろの手をひく女性ー。彼女の顔は切り抜かれたように抜け落ち、モヤがかかって、見えない。
彼女はきいろを裏切り者と言った。どこかビルの屋上だろうか。風がびゅんびゅんとうるさくて、冷たいそれが遅いかかる。この風は、化け物です。
きいろは、そう思った。周りはビルの建物の灰色さしかなかった。灰色の世界は、風の音と、彼女の冷たい手のぬくもりしかなかった。
彼女は、目の前で笑った。そして、何か呟き強い力できいろの腕を引き、足を踏み出すのだ。
そこでいつも目が覚めた。起きると汗が身体に染み付いていた。喉がひどく渇く。
毎晩みるこの夢はなんなのだろう。きいろは、どんなことよりも苦しく感じた。
自室には、刃物で引き裂かれたキャンバスが至る所にあった。絵が描けない。色鮮やかな絵の具と、筆をもつと手が震えて動かなかった。仕方がないので、鉛筆でわけもなく、ごりごりと白いそれに押し付けた。
誰か助けて欲しい。そう思うのに、きいろはその言葉がでない。悲しくて悲しくて、辛くて、この灰色の世界でひとりぼっちなのだ。
きいろは、呟いた。
「寂しい?」
ひどく静かな部屋で黒い点のように染み込んだ。
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