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37にしおりをはさみました!
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「あの、ごちそうさまでした。」
「いやいや、気にしないでよ」
「俺毎回払ってもらって……」
「学生は奢られてなんぼでしょ。それにさ、デートだから。」
「……。」
「かっこつけさせてよ、ね?」
すっかり暗くなってしまった辺り。
ボルダリングをした後、2人は智のおすすめだというイタリアンを食べに行った。そしてその後はうだうだと喋りながらドライブ。
そうこうしているうちにあっという間に時計は7時を迎えていた。
最寄りの駅で下ろしてもらった椿は運転席の方に回って智と話をしている。
「でもほんとに良かったのかい?家まで送るよ?」
「あぁいえそれは、……ここから近いですし」
「近いならなおさらだよ。それともなに、見られちゃまずいものでも?」
「そんな!そんなはずあるわけないじゃないですか!」
「ふふ、動揺が怪しいな」
「ほんとですって!」
智が運転席に座ったままクスクスと笑う。
椿はそれに対して頬を膨らませた。
「あ、そういえば。」
「うん?」
今日は休日ということもあってか、電車を利用している人が少ないような気がする。
さっきから電車は駅にとまっているのに降りてくる人が少ない。
そのおかげで椿も気兼ねせず智と話せている。
「あの、今日貸してもらった服……洗って返します。」
「いいよそんなの!気を遣わないで。」
ボルダリングの時に使った服。
すごくかいたわけじゃないけど、少しはやっぱり汗をかいたから。
それに、
「させてください。」
「本当にいいよ。そんないいものでもないし」
「だって、その服を返すって理由でまた会えるじゃないですか。」
土井さんの服を持って帰って洗って、持っていれば絶対に1回は会うことが出来る。
椿は声を小さくしながら頬を染めた。
ちらりと智の顔を見てみれば、その顔は面食らったような驚きを感じた顔になっていた。
「はは……可愛いなぁ」
椿の頭に智の手が伸びて、そのままぐしゃぐしゃと撫でられた。
「うう……」
「そんなことしなくても次はあるのに……。あんまりにも可愛いなぁ。じゃあお願いしようかな。」
「はい!すっごい綺麗にして返しますね!」
「あはは、そんなことされたら使えなくなっちゃうなぁ。」
智は困ったように笑うと、後部座席にあった服を椿に手渡した。
椿はそれを抱えると「使ってもらわなきゃ困ります。」と返した。
「すごいこと言うなぁ。」
「え?」
「君はほんと、罪な子だな」
それはこっちのセリフだ。
椿は首をかしげながら頭の中でそう言い返すと、辺りを見た。
さっきから何度か車が行き来していたが、全く居なくなっていた。
「じゃあ、またね。またメールするよ。」
「あ、はい。今日はありがとうございました。」
「うん、全然いいよ。またどっかいこう。」
手を振りながらそのままサイドブレーキを解除する智。
また、どっかいこう。
その言葉に幸せを覚えながら、椿はコクリと頷く。
ほんと、罪深いだなんて。
罪深いのはそっちだ。
黄色いランプが五回点滅するのを見送ってから、椿は抱えていた服をきゅうと掴んだ。
胸の辺りがじんわりと熱を持っていた。
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