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そうだ京都へ行こう8にしおりをはさみました!
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そうだ京都へ行こう8
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(葵語り)
食事も終わり、どこか甘味の美味しい所へ行かないかと野田さんが提案してくれた。
だけど、松山さんがどうしても回りたいお店があるからと断りを入れたのだった。俺が同伴したほうが商談がうまくいくらしい。元々そのために京都へ連れて来てもらったのだから、しょうがない。
商談が終わったら、落ち合う約束をして先生達とは一旦別れた。帰りは先生の車で帰る予定だ。
「今から行く店は少し遠いから、寝ててもいいよ。朝が早かったでしょう。」
車に乗り込むと優しく松山さんは言った。
目指すシフォンケーキのお店は郊外にあるそうだ。
しばらく車内は無言だった。流れる景色を車窓からぼんやりと眺めていると、いつの間にか寝ていた。
目を覚ますと車は止まっていた。外は薄暗く、夕方を過ぎているようだ。
あれ……時間が思ったよりも過ぎてる。
深く倒されている助手席から起き上がろうとすると、松山さんが物凄く近くにいることに気が付いた。
顔が近い。息遣いすら聞こえてきそうだった。
「……っ松山さん……?」
ぎょっとして思わず左側へ寄るも、狭い車の中だ。十数センチ離れただけで、あっという間に背中が助手席のドアすれすれになった。
「よく寝ていたね。寝顔が天使みたいに無垢だったよ。可愛くて本当に食べてしまいたい。葵君は、あの保護者さんと本当に恋人同士なの?」
「……こ、恋人です。俺の1番大切な人です。」
寝ていたせいで声が掠れた。
温和だった筈の松山さんが、急に俺にも聞こえるような舌打ちをした。貧乏揺すりをして明らかにイラついている。薄暗い車内のせいか顔の印影が濃く見えて更に恐怖を誘った。
「あんな奴のどこがいい?俺にはただのチャラチャラした自信家にしか見えない。俺だって君を随分前から見つけていたんだよ。1年前にあそこのカフェで働いている葵君を見たんだ。生まれて初めて一目惚れしたのに………君はあんな奴の傍に居るべきではない。」
様子がおかしい。松山さんの背後越しに外を見ると、沢山の木々が見えた。
山なのか。ここはどこだ……?
落ち着こう。状況を把握しないといけない。
目の前に居るのは見たことのない松山さんだ。
「あの……ここは、どこ……」
「あそこのカフェで君を見つけてから毎日通ったけど、それ以来会えなかった。ようやく見つけた時の俺の気持ちが分かる?心から嬉しかったよ。その君が、俺と話をしてくれて、俺のために仕事を手伝ってくれてる。そして今、目の前にいる。」
つう、と指先で頬をなぞられた。指先がやけにベトベトしている。気持ち悪くて、背筋に冷たいものが走った。
「ひぃっ……」
「怖くないからね。葵君は絶対に俺と一緒にいた方が幸せになれるよ。君を泣かせたりしないから。」
「ケーキ屋さん……は?」
この場に及んでもケーキを気にしているように見えるかもしれない。
とにかく話を逸らしたかった。だけど、そんなことをしたって逃げられる状況ではなかったことを直後に知る。
「本当に君はお人好しだね。こんな所にある訳が無いだろう。元々この出張も無いんだから。少しは人を疑うことを考えた方がいいんじゃない?そこがまた可愛いんだけども。
これから温泉に行ってゆっくり今後について話をしよう。近くに取って置きの宿を予約してあるんだ。」
背にあるウィンドウに松山さんが両手を突き、挟まれる。壁ドンより近い。
柑橘系の香水の香りが不快に鼻を突いた。
「逃げようとか考えない方がいいよ。ここはもう京都じゃないし、山だから熊も出るらしい。俺が食べる前に、熊に食べられちゃう。なんちゃって……笑える……」
蛇に睨まれた蛙のように動けない。
………けど、逃げなきゃ。
顔が更に近づいてきて、無理矢理唇が重ね合わされた。強い力で頭を押さえつけられ、ぬるっとした舌が入ってくる。
力では全くこの人に敵わないのは以前から周知の事実だった。
身体中に鳥肌が立ち、吐き気がした。
酸素も足りない。
気持ち悪い。
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