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組長の男にしおりをはさみました!
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組長の男
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そりゃ、手を出したら殺される。
「へぇ…………………ヤクザ……………………上等やないか」
ヤクザと聞いて、嵩原の目付きが数段上がった。
自慢じゃないが、これまで嵩原は、勝負と言うものに負けた事がない。
そう言う事に関しては、この男は天才だからだ。
特に、おわかりだろうが、喧嘩は破格に。
だから、大和の気になる男がヤクザだと知れば、抑えていた本能が解き放たれた気分。
嵩原竜也が、極道者に負けるなんて許されない。
……………………しつこいですが、助けてはもらったが、手は出されていないんですけど。
話は勝手に歩き出す。
世の中の誤認とは、こんな形で作られるのだろう。
極道界のカリスマを敵に回したら、こうなるらしい。
「俺が出向いて、組ごとブッ潰したるわ」
事は、戦争の様相を呈する。
いや、何で…………………っ!!?
父親のぷっつん振りに、大和は口をあんぐりと開けて、呆然と立ち竦む。
嵩原自ら、組へ殴り込み?
大和の知る限りでは、ここ数年父親が殴り込むなんて、記憶にない。
「お、親父…………………嘘やろ?」
「嘘?……………………何が、嘘や。自分のもんに手ぇ出されて、何で俺が黙っとかなあかんねん。落とし前つけんのは、当然やろ」
そう断言すると、自分の腕を掴んでいた大和の手を引っ張り、嵩原は恐い顔でその身体を抱き寄せた。
「あっ………………待…………っ」
「相手がヤクザなら尚更や……………………筋違える様な真似しくさる輩は、容赦せんで」
強い者が、絶対。
嵩原の上がいないこの世界で、嵩原のモノに手を出せば、それはとてつもない掟破り。
自ずと、息子LOVEなお父ちゃんのジェラシーは、マグマの如く煮えたぎる。
平和主義に見える父親も、やはりヤクザ。
自分の手の中を探られては、眠る獅子も牙を剥く。
「…………………………親父」
ああ、格好イイ。
このギラギラした感じに、ゾクゾクする。
ヒップにかかるかかからないかの手の位置も、微妙さ加減がやたらエロくて、下半身がキュッとする。
大和は父親に腰を抱かれ、息を飲むほどのその鋭さに見惚れた。
「…………………………て、そうやないわっ!も…………俺、どんだけ惚れとんな………………っ」
親も親なら、子も子である。
結局、お父ちゃんが好きなんだな、どら息子。
「何か勘違いしとるわ、親父っ」
「勘違い………………?俺の何が勘違いな」
「俺は、手なんか出されてへんでっ!そら、スーツに手は入れられたけどやなっ………それは……」
「おま………………スーツに手ぇ入れられたんかっ!!なんつー手の早さや、ボケがァっ」
「え…………………………」
そうなるよね。
『スーツに手は入れられた………………』
もう、掘る土もない位、墓穴は深く堀下がる。
スベッた口は、だだスベり。
喋れば喋っただけ、事態は悪化の一途を辿る。
「おんどれ…………………二度とお天道様なんぞ拝めへんように、喉元噛み切ったんぞ……………っ」
恋は盲目。
一番盲目にしたら危険な男を、盲目にしたかもしれない。
「さ………………最悪や………………名前、絶対に言えん」
まだ名前しか知らないが、桜井に多大な迷惑をかける。
教えたが、最期。
確実に、灰皿に潰れた吸殻。
伊勢谷が言った通り、悪い奴には見えなかった桜井湊が、気の毒になっていく。
「はぁぁぁ…………………こないに格好ええのに」
自分を包む、たくましい腕。
普段ならキュンキュンする父親の胸板も、なんだか凶器にさえ見えてきた。
この悩ましい身体から繰り出される拳がまた、思った以上に重くて身体に響くのだ。
桜井湊が例えどんなに強くとも、父親が負ける姿は想像出来ない。
自分を抱きしめる父親の顔をチラッと見上げ、大和はどうしたものかと考える。
自分が寂しいなんて思ったから、桜井の姿に変な気持ちになってしまったんだ。
「コホン…………親父、お気持ちはわかりますけど、もう少し若の話を聞いて差し上げたらいかがです?」
そんな大和の心中を悟るように、高橋が後ろから救いの手。
「………………………あ?」
「高橋……………………っ!!」
さすが、高橋。
大和は目をキラキラさせて、希望の光へと振り返った。
「相手がヤクザやったら、話は早いやないですか。イテまう事など、いつでも出来ますよって」
高橋ぃ…………………!?
キラキラ飛び越え、驚愕である。
イテまう?
イテまうって言った?…………………今。
穏やかに見える高橋の表情が、般若と被る。
綺麗な顔の裏は、何でしょう。
「手ぇ出したか出さんかは別として、その辺のたかだか程度の知れたヤクザが、天下の竜童会若頭に気安く触るやなんて…………………そら、組くらい潰さなあきませんね。行かはる時は、いつでもお供致します。ですから、その前に若の話お聞き致しましょ」
「…………………………高橋」
怒れる嵩原を見据える、高橋の瞳。
火種は、もう一つあった。
嵩原があまりに怒るが故、耐えてはいたが………………大和のスーツに手を入れた?
それは、若の身体に触れた言う事か………………?
嵩原ならともかく、いきなり出会ったヤクザが、引き締まった大和の美しい身体に、触れた………………。
ナメとんの。
一発二発殴るだけでは、気が済まない。
高橋の愛も、永遠です。
「………………………まあ、そうやな。名前さえ聞けば、同業なんぞどうにでもなる。ウチの手にかかりゃイチコロや……………………大和、話せえ。それ握って乗り込んだるわ」
言えるかァァァ……………………!!
竜童会ツートップに愛される。
悦びも嫉妬も、その規模ツートップ。
大和の身体も、押し潰されそう。
「ず…………頭痛がするわ……………親父と高橋相手に、誰が喧嘩出来んねん…………………」
誰も出来まい。
大和への嫉妬で、伝説のコンビ復活。
誰か、冗談だと言ってくれ。
抱える頭も、床へ落ちそうな程重い。
「若………………………若のお身体は、ご自分が思われてはる以上に大切なもの。下手なヤクザが触れてええもん違います」
「高……………………………」
だが、哀しいかな冗談ではない。
頭を抱える大和に歩み寄り、優しく手を握りながら話しかける高橋の目は、本気。
「オイ…………………………」
だだ、お父ちゃんは、怪訝顔。
大和の手、捕まっとるやん?
はい。
高橋の手に、しっかり握られてます。
でも、高橋は殴らない。
前に一度殴った時、互いの想いは充分知り得た。
嵩原が高橋を殴るなんて、余程の事。
あれは、二度としたくない。
口には出さないが、嵩原はちゃんと高橋の大和への一途さを認めている。
それをわかった上で、高橋も大和へ触れる。
認めてもらえるだけの、愛を持って。
「親父……………………いくら苛立ってはる言うても、私の前でこれ見よがしに若にベタベタして……………………ええ加減、私の我慢にも限度があります」
「へ…………………………」
そうして、高橋の唇は溢れる愛情と共に、大和の手へ添えられる。
やんわり当たる、柔らかな感触。
腰は父親に、手は高橋に。
組内きっての色男二人に囲まれたら、ガキんちょなんてほぼ無力。
大和の顔は、あっという間に赤くなった。
「お心は、親父にお譲り致しますが………………想う気持ちは、負けておりません。嫉妬かて、同じです。大事な大事な若へ触ったやなんて、私が先に握り潰してやりたい位ですよって」
嵩原が、わざわざ出るまでもない。
俺が………………ぶっ殺したるわ…………………。
大和の手を撫でていた唇を離し、高橋は鋭い眼差しで顔を上げた。
「アホ言え………………大和は、俺のや。お前の気持ちもわからんでもないけどやな、向こうにお灸据えんのは俺やぞ」
高橋が唇を離した途端片腕に力を入れ、嵩原は益々大和の身体を抱え込む。
「ちょ…………………お……………親父っ」
戸惑う大和も、お構い無し。
大和は、自分のモノ。
わかりきった事だが、誰にも譲らない。
そこは、いくら高橋でも知らしめる。
「もう………………頑固ですね。たまには、親父を休ませたろう言うてるんやないですか」
「よう言うな。大和の事になったら、冷静さも欠く奴が…………………お前が、休んどったらどうや」
「それ、私に言います?若の話を聞く以前に、キレまくってはる、お方が」
何だ、コレ。
大和に手を出したヤクザを握り潰すが為に、嵩原と高橋が攻防戦。
話がどんどんややこしくなる。
王子(二人共30代ですが)二人に挟まれ、大和は溜め息さえも消え失せる。
「もぉ……………直ぐ山代ンとこ、行ったら良かった」
山代なら、もう少し冷静に話が出来る筈。
いやいや、大和。
山代の想いも、なかなかのものだと思います。
もしかしたら、一難去ってまた一難………………?
「俺の嫉妬なんか、可愛いもんやな………………」
だね。
さて、これをどう鎮火させよう。
しばらく二人のやり取りを聞きながら、大和は火消しの策を練る。
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