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盗撮は犯罪ですにしおりをはさみました!
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盗撮は犯罪です
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一歩踏み出すと、前の2人は退けてくれるどころかさらに立ちふさがった。
「どけってば」
「嫌だね」
早く行かなきゃならないんだよ、薫のところへ。早く。
「薫ちゃんのところはさ、俺らが行ってあげるから。」
「次あったらもう薫ちゃんオニーサンのこと見ないかもね」
愉快そうに笑う2人は、なぜそんなに俺が気に入らないのか。
初めて会ったのに。
昨日、初めて会ったはずなのに。
「昨日さー」
と、1人が口を開いた。
「あれから遊んでても薫ちゃんあんたのことばっかなんだよ。これ好きそうとか、一緒に来たかったとか」
そんなことを言ってくれてたなんて、とこんな状況にもかかわらず、嬉しくなった。
「薫ちゃんは優しいよねー、こんなブサイクなオニーサンでも気遣ってあげるんだから」
そんなこと、
「お前らに言われなくても知っている」
そう言うと、2人の視線が鋭くなった。
「おおかた、あんたら薫のことが好きなんだろ?で、俺が邪魔なんだろ?」
「………まじウゼェわこいつ」
知ってるんだよ。
「薫がお前らなんか好きになるかばーか」
そんなこと、ずっと前から知っている。
「ッンダとこいつ‥…ッ!!」
「っ、!」
1人は頭に血が上りやすいのだろう。
真っ赤になった顔で、目を血走らせて俺の胸ぐらを掴んで頬を殴った。
しかもグーで。
「いっ、た…」
勢いに倒れこんで頬を抑える。
あー、これは腫れる。
薫になんて言おうか。
そんな俺の様子にコソコソと話し出す2人。
「おいマズイって」
「こんくらいしねぇとダメだろ」
「けど仮にも兄弟だぞ?」
仮にもっていうか、本当の兄弟だけど。
「そだ、写真と撮っとけ」
「あー、わかった」
オニーサン、と片足で肩を蹴られ、後ろへ倒れた。ゴツンっと打った後頭部は大丈夫だと思いたい。
「なに、」
すんだよ、という前に。
ーカシャッ
と、カメラのシャッター音が聞こえた。
なにしやがったこいつら。
「いやね、俺らの友達にも紹介しようと思って」
「よかったね、友達増えるよ」
嫌な予感しかしないんだが。
「消せ!」
「やだねー」
と笑いながら走っていく2人を追おうと立ち上がったが、
「いっ、」
倒れこんだ時に捻ったのか、足に鈍い痛みが広がり、また座り込んでしまった。
捻挫か…冷やしとけば治るだろうが、しかしなんて厄日だ今日は。
だんだんと熱を持つ頬も晴れてきているのだろう。
「あー行きたくねー」
座り込んで寄りかかった壁に額を押し付ける。
せっかく今まで普通に学校生活送ってたのに。
一瞬にしてパァだ。
問題は、あの写真をどう使うか。
「本当、最悪だ」
昨日と今日と。
きっと、これから。
『とらないで』
ほら、また。
『僕を、1人にしないで』
お前は一体誰なんだ。
チロリンっと、聞き慣れた携帯の着信音が鳴った。
取ると、グズッグズっと鼻水を吸う音が聞こえてくる。
「泣いてるのか?薫」
そう聞くと、俺を、と声が聞こえた。
「俺を1人に、しないでよっ!!」
『僕を1人にしないで』
あぁ、やっぱりお前だったのか、薫。
俺の中で泣いているのはお前なのか。
「ごめん」
「ん」
「すぐ行くから」
「ん」
「今どこ?」
「あざにぃの『庭』」
そういった薫に、少しだけ気になったことを聞いてみた。
「そこ誰かいる?」
「いない」
あいつは、来ていないのか。
いや、いつもそこにいるとは限らないけど。
「はやぐっ!」
「あぁ、ごめん」
我がままで可愛い弟を迎えに行くために、少しだけ痛む足を立たせて、薫が降りていった階段を駆け下りた。
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