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好きだにしおりをはさみました!
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好きだ
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自販機で買ったジュースを飲みながら、薫は買ったココアをふーふーと冷ましながらねぇと聞きてきた。
「あさにぃもしかして、颯佑のこと…好きなの?」
「はぁ?」
なんでそうなるという顔で思わず間抜けな声を出してしまった。
だってそうだろう、いきなりそんな突拍子もないこと言われて驚くなという方が無理だ。
「俺が?神凪を?……な、なんでそうなる」
動揺してしまった俺に、だって、と薫は続ける。
「最近あさにぃ颯佑のことばっかり」
「いや、だってそれは…、」
初めての友達だったし。
「いらないって言ったじゃん」
「……あぁ、」
「あさにぃに友達はいらないの」
俺ジッと見つめる薫の目が、怖い。
なんだかそれは俺を責めているようで。
「か、かお、」
「僕を守るのはあさにぃでしょ」
『あさにぃのせいだ』
「しっかりしてよ」
『あさにぃがーーだから』
「……やめろ」
ー止めてくれ。
なぜか酷く耳を塞ぎたくなった。
わからないけれど、心が締め付けられるように痛かった。
「ごめん、俺のせいなんだ、俺の」
「……もういいんだよあさにぃ」
薫の手が俺の頬を包む。
俺よりも小さくて繊細な手。
滑らかに俺に触る手を俺は握り返した。
「アイツが悪いの。あさにぃじゃないから」
アイツって、誰なんだ。
俺のせいと言いながら、何がそうなのか自分でもわからなかった。
けれど薫はわかっているようで。
その瞬間、ストンっと何かが落ちた。
俺の知らない記憶があると。
なぜないのか、何が足りないのかなんてわからなかったけれど、それがとても大事なものだということだけはわかってしまった。
それがきっと苦しいものだということも。
「薫」
「あさ、にぃ?」
「もし、俺が神凪のこと好きだって言ったらどうする?」
「え……?」
「俺は最低なんだよ。
神凪と一緒にいると楽しくて、落ち着いて、居心地がいいんだ」
「それ、は、友達ならみんなそうだよ」
ピクリと掴んでいる薫の手が微かに震えた。
その手を強く握り返す。
「俺は神凪のことがもっと知りたい」
「………」
「神凪を、思い出さなきゃいけない気がする」
「別にいいじゃん」
「ダメなんだ」
それじゃ。
「薫と同じくらいに、神凪の笑顔が見たいんだ」
それは薫が1番だという自分を否定することだ。
けれど1番怖かったその感情を吐き出せたのは神凪のおかげだ。
「そういう意味でなら、俺は神凪が好きだ」
「…また…ッ!」
バッと薫は俺が握っていた手を勢いよく振りほどき早足で歩き出した。
「薫っ!」
「あさにぃは、僕のそばにいればいいのに!」
「、かおる…………ごめん」
走った薫を俺は追いかけることができなかった。
追いかけて何ができるのだ。
抱きしめたって意味はないのに。
ちゃんと解決したらまた薫の元に戻るから。
だからせめてそれまでー。
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