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君がために 4にしおりをはさみました!
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君がために 4
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シンっと、空気が静まり返る。
薫も夏樹さんも出て行った後2人っきりの空間で今までにない雰囲気が漂っていた。
秘密を隠していたのは薫にだったはずなのに、なぜか颯佑に秘密がばれたような感じがしてさっきからどくどくとと心臓の嫌な音が止まらない。
「…………、そう…、」
なんて言えばいいのかわからない。
謝る?
笑う?
泣く?
あ、いや泣く必要はないや。
「さ、騒がしかったな、なんか、えっと……、何してたっけ、はは」
「………」
頼むから!なんか言ってくれ!!
「また」
「うん?」
「また泣くのか」
おっ、
「お前絶対俺の事泣き虫だって思ってるだろ…!?」
「………思ってない」
「…うそだ!」
た、確かに訳も分からず泣きそうにはなったけども!
颯佑の前で泣いたのなんて初めて会った時と告白した時以来だっつの!!
「大丈夫」
「わっ、」
わしゃっと髪を少しだけ乱暴に撫でられた。
「………あさ」
「ん、」
「何回」
「なにが?」
「何回言ったら安心する?」
スリ、と頬を撫でられる。
何を、なんて言わなくてももうわかる。
だってずっと一緒で、好きだったんだから。
大好きだったんだから。
「一回」
「………だけ?」
「一回だけでいいから、だ、」
「だ?」
「抱きしめて、ゆっくり……」
「………わかった」
颯佑はそう頷くと席を立ち、俺の前に立つとぎゅうっと腕を回した。
「っ、そ、」
苦しい。
力が強すぎて息が詰まるほど苦しいのに、その分だけ伝わってくる。
「あさ」
俺の名を呼ぶその声も力強くて優しくて。
「好きだ」
ゆっくりと、本当にゆっくりと。
紡がれたその一言に一筋だけ頬を涙が伝った。
颯佑には及ばないけれど俺も颯佑の体に手を回して力一杯抱きよせる。
足りない、こんなんじゃ自分の気持ちを伝えるのには弱すぎる。
「お、俺も、好き」
「………あさ」
「好き、好き、大好き颯佑」
この熱を、俺に幸せをくれる暖かい颯佑を離したくなんてない。
なのに届かなくなってしまいそうな胸騒ぎがずっと止まらない。
「颯佑」
「……」
颯佑
「颯佑……っ」
行かないで。
「あさ」
薫のところになんて行かないで。
「どこにもいかないから、泣くなあさ」
「泣いて、ない……っ!」
俺をもう1人にしないで。
そんなこと、言えるわけがない。
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