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『昴流はどう?』
「…?」
先の発言がなかったかのような華麗な話題転換。涼が現在進行形で撮った奴を見ているってことを忘れてしまいそうになる。
涼の質問の意図が読めず、一度電話相手に首を傾げ、意味を考える。俺と同じで元気かって意味で聞いてるのかなと思って「元気」と返したら違うと笑われた。聞くに精神面の話だったらしい。
『寂しくなかった?嫌なこととかなかった?』
「なかった」
『そう?良かった』
まだ1日目で、メールもちょくちょくしてたんだから寂しいって感情はまだない。俺大丈夫って言ったのにどれだけ涼の中で俺は寂しがりなんだろう。兎以上に思われてるんだろうか。
もやもやすることはあったけど、これは俺が勝手にしてるだけで涼は悪くないから涼には言わなかった。
『昴流、明日俺7時くらいには帰れるから俺の家においで。俺の家で晩飯作って待っててくれたら嬉しいな』
「良いけど」
『じゃあ、昼に食べれなかったらロールキャベツでお願い』
「…ん」
ロールキャベツ…明日スーパー行かないと。あ、後明日の泊まる準備も。泊まるんなら兄貴の晩飯も明日朝作っておいた方が良いよな。
『ふふ、楽しみ。お嫁さんが俺の家で待っててくれてるんなら明日も頑張らないとな』
俺が頷いただけで嬉しそうに声を弾ませる。
やっぱり、嫌って思ったこと涼に言わない方が良いかも。俺、涼が笑ってくれるんならそれだけで良い。これ以上欲張ってたらきっと罰が当たる。
ぎゅうう、と熊の人形を抱き締める。涼に言えないその言葉をそれにぶつけるように。
『…嗚呼…、思ってた以上に喋ってしまったな。ごめんね、昴流』
「んーん…、大丈夫」
話し出したら止まらなくて、それからも話題は絶えず続き、気付けば針は1時過ぎを指していた。
いつも寝る時間よりも遅いからか眠たいけど、涼と話せんのは楽しいから眠たくてももっと喋っていたい。
『昴流眠たいでしょ。いつもこんな遅くまで起きてないもんね。明日一杯話そう?』
「…う、ん…」
『ごめんね遅くに。聞いてくれてありがと』
マイクから聞こえるリップ音。
涼の声が聞こえなくなるのは残念な気もする。明日また会えるから少しの間だけの我慢。
これ以上話してたら俺明日起きれないし、涼だって朝早いんだから。
抱き締めていた縫いぐるみに顔を埋めてもっと話していたい気持ちをぐ、と堪え、涼の言葉に頷く。
『…じゃあ、お休み昴流』
「……あ、だめ…待って」
『…ん?』
涼が電話を切ろうとしたところであることをふと思い出して、電話を切ろうとする涼を止める。
「どうした?」と優しく声を掛けてくれる涼。今から言おうとすることに心臓がバクバクだ。言ってって言われてから言うのは意識してしまって言いにくい。
「りょ、ぉ…」
『ん?なーに?』
「そ、の…だっ…だ…、だいすき…っ」
『…っ』
「おおや…すみ…」
涼に言ってと言われたそれを口にし、俺の頭は限界を迎えてぶちりと電話を一方的に切ってしまった。そしてホーム画面に戻った携帯の電源を切って頭から布団を被る。
心臓が飛び出してしまいそうな位に五月蝿くて、先まで何ともなかったって言うのに体が暑さを訴えてくる。
やっと心臓が落ち着いてきたら、代わりに今度は眠気が襲ってきて。段々と大きくなっていくそれに抗えず俺は瞼を閉じた。
『お休み小悪魔ちゃん。帰ってきてからが楽しみだな?』
…なんてメールが朝起きたら届いていただなんてこの時の俺が知ることはない。
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