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1月になり、本格的に受験が始まる頃には、2人の距離は離れていった。
彼方が梁瀬の志望校を知ったのは、公立高校の願書を出しにいった次の日だった。
『彼方、お前は男子校行かねーの?』
同級生の何気ない一言に彼方は頭の上に?を浮かべた。
『なんで男子校?この辺に男子校なんてあったっけ?』
『え、知らね?梁瀬、高藤行くっぽいよ。』
『……そうなんだ。受験のことはお互い何も教えてないから知らなかった。』
『まっ、お前は泉高校ぐらい余裕だもんな。』
『そうでもないよ。』
梁瀬が、高藤高校に。
今まで気にしたこともなかった学校だったために、彼方は心底驚いたが、すぐに願書を用意して高藤高校を受けることにした。
元々頭もよく、泉高校が滑り止め程度でしかない彼方にとって高藤は何もなければ、なんなく合格できる高校だった。
担任には、ひどく驚かれたが、反対する親もいなければ、彼方の兄も高藤高校への受験を応援してくれた。
そして、4月。
梁瀬と彼方が話さなくなって2ヶ月ちょっと。
彼方は1人、学校への道を歩いた。
***********
「……懐かしい夢。梁瀬にあんなこと言われたからだ。」
羽桜久夜。バスケ部の1年生。足も早くて、誰とでも仲良くなれそうな笑顔をした。あいつ。
俺から梁瀬を奪っていった、あいつ。
「彼方入るよー。
どうしたの、珍しいね。泣いてるなんて。」
「え、あ……本当だ。」
「何か悲しい夢でも見たの?」
「悲しい夢……、叶萌兄さん。」
「ん?」
「失恋、って結構辛いですね。分かってても。」
「………彼方がそう思うならそうなのかもね。
さっ、朝ごはんだよ。」
「はい。」
優しく笑った叶萌兄さんは、エプロン姿で1階に降りていく。
昔の梁瀬はあんなにもキラキラしていた。
それを奪ったのは、俺だったのかもしれない。
羽桜と付き合うと言った梁瀬は、震えてたけど、幸せそうだった。
梁瀬の穏やかな顔を久々に見た気がする。
『彼方は大切な友達だから。』
壊してしまった関係が、すぐに戻るなんて考えてない。
むしろ大切な友達、と言われただけでも十分すぎるくらいだろう。
俺は梁瀬が好きで、好きで。どうしようもなく傍にいてほしかった。
だけど、梁瀬にとってその相手は俺じゃなかった。それだけだ。
……傷つけたかったわけじゃない。
苦しめたかったわけじゃない。
ただ、一緒にいたかったんだ。
俺が願ったのはそれだけだったのに。
「我が儘はやっぱりだめか。」
羽桜久夜、思えばあいつは最初から梁瀬しか見ていなかった。
1年前のあの日から。
大切にしてくれるのなら梁瀬を預けられる。
泣かせたら全力で奪いに行くけれど。
「俺にとっても大切だ。梁瀬。」
お前がまた昔みたいに笑ってくれるなら、お前をこれからも見守れるなら、俺は悪役で構わない。
--END--
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