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甘党の騎士 →side sizuにしおりをはさみました!
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甘党の騎士 →side sizu
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目の前で、僕の作ったタルトに目を輝かせる青年は、浦嶋右之丞というらしい。さっき領収書で名前をみせてもらった。
僕よりかなり身体が大きいし、しっかりした顔つきをしているので、成人してると思ってたけど、たさ高校生とは想定外すぎた。
フォークを口に運ぶ様子とか、手つきや食べ方をみると、どうやら顔つきには似合わず上品なので、育ちはいいのだろう。
「ウノスケ君は、喧嘩強いんだね。なんか武道でもやってたの?」
「んー?ああ、えと、合気道と剣道と柔道と空手」
それ全部か、思わず突っ込みたくなる心情をこらえて、紅茶を注ぎ直す。
大きさの割にしなやかそうな、綺麗な体つきは、鍛えた結果なのだろうなと思うと、自分の身体が貧相に思える。
「うちは、古い家でさ。こーいう、甘いやつとか男が食うなっつ食べさせてもらえなかったから…………すげえ、憧れてたんだ」
口に運び、鋭く尖ってみえる目尻をさげて食べる顔は、年相応で可愛らしくみえる。
「そうなんだ。僕は昔から、洋菓子に囲まれて過ごしたから、なんだか想像できないけど」
「あと、オレ、顔が似合わねえしな。なかなか、買う勇気がでない…………」
ちょっと恥ずかしそうに俯く様子に、たしかに周りは似合わないとか言うんだろうなと思う。
こんな店に入るのも勇気いるんだろうけど、僕が絡まれているのを見て、入ってきてくれたんだろうか。
「お菓子好きだと思われたら恥ずかしいの?」
そっと問いかけると、右之丞は小さく頷いて、フォークでタルトを刺すと口に運ぶ。
「だけど……久亀さんの、こんなうまいスイーツが食べられるなら、どう思われても買いにきちまうかな」
パティシエにはそんなの殺し文句だよな。そんなことを、さらっと言うんだね。
顔に似合わず可愛らしいことを言う、彼に僕は好感をもってしまう。
「ねえ、ウノスケ君が良かったら、うちでバイトしないかな?用心棒がわりに。彼らがくると、営業できないから。君がきてくれたら、多分あまり来なくなると思うんだよね」
「バイト…………。オレも、顔こわいから…………お客さんビビらないか」
ちょっと自信無さそうにうちの店を心配してくれる。
とても、イイコなんだろうな。
「大丈夫だよ。接客より、裏の肉体労働をお願いするから」
そう言うと安心したように笑って、いいよと快諾してくれた。
「ありがと。お土産もってく?さすがにかなり売れ残ったから」
僕は、箱に今日の売れ残りのケーキを詰めて、嬉しそうな顔をする彼に持たせて見送った。
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