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俺は嬉しくなって、言葉を続ける。
「ざっくりした、白のニット。モデルさんみたいで、凄くカッコ良かったです」
「来年の夏はサマーニットのアイテムをおすすめしたいんだけど、ここ数年は、あっちいからなぁ〜。まぁハミドみたいなのは年がら年中クーラーとかの涼しいところに居そうだから、いいかなとは思ってたんだ。でも、あれは着てもらえないと思ってたよ。彼は老獪な仕事を好むだろう?」
俺は手を横に伸ばして神地さんの手でサイズ直しの邪魔にならないよう、ポーズを取っている。
「老獪?ハミドの服って、オーソドックスとは思いますけど…」
俺が気になって聞くと、神地さんは笑って答えた。
「ハミドのベルトと靴、同じ革を使ってるって気がついた?
あれ、コードバンという貴重な馬の尻の革なんだけどね、高いものは相当高いし、希少性もあってなかなか入手できない。アイテム一つ取っても、ハミドのコーデは外さないのが第一義だ。
本来なら何十年とお洒落を楽しみ尽くした人が、一度はやってみたい道楽なんだよね。ハミドの年齢であれが似合うのは相当…。余程ストイックな生き方でもしていないと、着こなせないんだよ。」
品がいいなとは思ってたけどな。ハミド、あれで王子様なわけだし。
「俺はさ、一応服を業にして生きてるわけだけど、あれだけスタイルの確立されてる客に、もっと新しい事を提案してみたいなって思ったんだよね。ずばり、お前若いんだから、もっと冒険しようぜって。」
一通りサイズ直しのメドが立ったようだ。
楽にしていいみたい。
神地さんは俺をソファ席に誘導して、コーヒーを入れてくれた。
「ビジネスの時の服は、他の職人の仕事に任せて俺はハミドの私服のクローゼットの中から、俺の作った一着を着てもらおうと野望を持ったわけさ。
あとは、シオンに近いコーデでカップル感を出すとかな。あぁ、大丈夫。デザイナーって職業柄、こっちの人間多いんだよ。銀座の大通りに家紋みたいな模様のBAGを売ってるだろ。たっけーやつ。ルなんとかのデザイナー、あいつもそうだしさ。
さっきのマリンテイストに合わせてイメージはもう考えてあるんだよ。」
「へぇ、それは楽しみにしてます。ハミドが年相応に見えるのは、俺も嬉しいな。」
「じゃあ、俺たち、ハミドの脱おっさん計画の同志な!」
そんな話を、していると下の階が何やら賑やかになった。
どうしたのだろうかと思っていると、神地さんは
「爆買いツアーか何かの客だろ。沢山来て、大量に買ってくれる。少し騒がしいけど、気にしないでくれ。コーヒーでもお代わりどうだ?」そう言って相手をしてくれた。
俺は喜んで、その後も神地さんが大丈夫な時間まで、洋服の話を、聞かせて貰い、おしゃべり
を楽しんだ。
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