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●レナードの場合:悟視点
今日はレナード様の誕生日だ。
あろうことか、誕生日プレゼントをどうしようかと悩んでいると、
「サトル。来週は俺の誕生日だ。プレゼントはサトルがいい。あとは何もいらない」
なんて、まったくムードのないことを言い出したので、思い出すだけで腹が立って仕方がない。いや、考えなくてよくなったけれども。俺がプレゼントって何。それで、はいどうぞと言うとでも思ったか。
カシャカシャカシャ──。
「あの。サトルさん、クリームが溢れてますよ」
「え?……うわっ!」
やっとルイスさんの声が届き、ハッと我に返る。怒りに任せてクリームを泡立てていると、ボウルが傾いたらしく溢れていた。それにエプロンにもついてしまっている。幸い、クリームの量はまだ十分な量が残っていたので、そこだけほっと息をつく。
やってしまった、と溢れたクリームの処理をしていると、ルイスがふふっと笑って。
「その状況でレナード様にケーキを作るなんて、サトルさんは優しいですね」
「え、言ってました?」
「はい。全部」
「ああ……」
俺は項垂れる。どちらかと言うと、いつの間にかルイスに聞かせてしまっていたほうが、内容が内容なだけに恥ずかしい。
「でも、レナード様が欲しいものをプレゼントするのは、素晴らしいことだと思いますよ?」
「それは、そう思うのですが……」
その欲しいプレゼントというのが俺。自分で内緒で準備するのはいいとして、相手から事前に言われてしまうと、なんだか気まずくて逃げ出したくなるような気持ちになる。この複雑な気持ちをどうしたらいいだろうか。実際、どうしようもなくて、少しでも紛らわせるように俺はケーキを作っているのである。
正直なところ、ケーキで勘弁してくれないかな……と思っていたり。
憂鬱なまま解決策もなく、夕方が訪れてしまった。
誕生日プレゼントの話をするくらいだから、レナード様は早く帰ってくるだろう。と、噂をすれば、玄関のほうから音が聞こえて。もう逃げることは出来ないのだから、腹を括って玄関へと急ぐ。
帰ってきたのは、当たり前だけど、どこをどう見てもレナード様だった。
「おかえりなさいませ……」
どう誕生日のことを言い出そうか迷い、口ごもった風になってしまった。それを聞いて、レナード様は挨拶のハグをしてくれて、背中をポンポンと撫でる。
「ただいま。元気がないが、どうした?」
声音から本当に心配してくれているようだ。そういうところが──。
かあっと頬が熱くなって、俺は顔を見せないようにレナード様の胸へ顔を埋める。
「……誰のせいだと思っているんですか」
「ああ……あれを意識してくれてたんだな。嬉しいよ」
レナード様の手が背中から髪へ移動し、くすぐったい。
「お誕生日おめでとうございます。ケーキを作ったんですが、いかがですか?」
──。
まさか気を紛らわしたケーキで、こうなるとは思っていなかった。ちなみにレナード様の言う「プレゼントはサトル」というのは、レナード様が帰ってきた時からすでに始まっているらしく、今現在も実施しているところである。
それは何かというと、レナード様の膝に座ってケーキを食べさせるということだ。恥ずかしすぎる。
ふわふわのスポンジに生クリーム、そして、苺の乗っているシンプルなショートケーキ。レナード様は日本のショートケーキは初めてらしく、とても楽しそうにしている。その楽しそうな顔が少し憎い。
だから、俺はケーキを一口サイズより少し大きめに切って、レナード様へ運んだ。それをレナード様は何も文句を言わずに食べてくれる。こう見てみると、レナード様が大きな口を開けて頬張る姿は可愛いかも。ますます子供みたいで。
「どうですか……?」
「甘い」
そう言ってレナード様は、口端についたクリームを舐めとった。それでも、まだ残っていたので、唇を寄せて舐める。
「ほんとだ……甘い、ですね」
開く唇はすぐにレナード様の唇に塞がれて、もっと甘いキスを堪能したのだった。
End
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