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16にしおりをはさみました!
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目の前でだんだんと弱っていく九十九昴を、ただ見ていることしかできない自分に苛立ちを感じ、己の拳を握りしめる藤木悠の手には赤い、血が滲んでいた。
「くそっ!」
耳元でクスクスと笑う声がする。夏目史隆はいったい何を考えて自分をこの場所へと呼んだのだろうか。藤城悠は、守れない自分を責め、大切な人を傷付ける夏目史隆を憎んだ。
「あらら。そんなに強く握りしめたら、跡が残るよ。そんなに自分を責めるものじゃないさ。藤城悠、君に彼を守ることはもともと無理な話だってことだよ。」
「ふざけるな!なぜ俺をここへ連れてきた!弱っていく昴を俺に見せつけるためか⁉︎」
すると突然、首に当てられていたナイフが離される。藤城悠は夏目史隆を振り返り、殴りかかった。
「昴を解放しろ!」
しかし、藤城悠の拳が夏目史隆の頬にあたる寸前、ピタリと止まった。
「ゆ…う」
拳を収め振り返ると、九十九昴が力なく藤城悠を見ていた。声は消え入りそうに儚く、今にも崩折れそうな手を必死に藤城悠へと伸ばしている。
「昴‼︎」
叫び向かう藤城悠は、夏目史隆の存在など全く頭から抜け落ち、昴の元へと走りだそうとした。しかし、立場的にも置かれている状況の元では不利にある藤城悠がその行動を許されるはずもなく、一瞬にして動きを止められてしまう。
「はなせ!昴‼︎」
お互いに伸ばし合う手が近づく。少しずつ距離を縮め、触れ合おうとする指先が触れ合う事はなく、九十九昴の目の前で藤城悠はその場に崩れ落ちた。
色のなかった視界に広がる赤い赤い血の海。
藤城悠の服を赤く染め上げていく。
ああ、またこうして失ってしまうのか。また、この赤に奪われるか。
藤城悠の背中に突き刺されたナイフがキラリと光り、怪しく微笑む夏目史隆の表情をより一層不気味なものえとさせた。
「ただ見ているだけなんて、そんな退屈な事を君にさせるわけがないじゃないか。君は、九十九昴を絶望のどん底へと突き落とすための道具なんだから。」
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