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日常を為すべきだと、刹那にしおりをはさみました!
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日常を為すべきだと、刹那
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どうして、そんなことを言うんだよ。
その優しさに、俺は油断してしまったのかもしれない。
春乃でいられることが嬉しくて。
いつもは副会長でいないとあのことばかりを考えてしまうのに、今この瞬間だけはそうではないことに気づいたから。
だから俺は、優しくて暖かい陽だまりに身を委ねてしまったのだ。
タイミング悪く月明かりに照らされた俺の顔が見えてしまったのだろう。
本当は焦らなければならないのに、それすらすることが出来なくて、感情に体中が支配されてしまって、溢れ出る涙を止めることが出来なかった。
「…泣いてる…?」
立ち止まって顔を隠すように横を向いて俯くと、先に続ける言葉を必死に探す。
たとえそれが見つからないということが分かっていても。
けれど俺が言葉を探すより先に、一縷のがっしりとした手が、俺の骨ばった手を掴んできた。
それは大きくて、安心感のある手だった。涙に触れて濡れてしまった俺の手を、一縷はギュッ、と包み込むように掴む。
「手、濡れちゃうから」と言おうとしても、口が思うように動いてくれない。一縷の真っ黒な瞳が、俺の瞳を捉えて離さない。
「…大丈夫、俺はちゃんとこの桜川のことを見てるから」
本当に、どうしてそんなことを言うんだ。
そんなことを言われたら、涙が止められなくなるだろう。
…何もかもが揺らいでしまうじゃないか。
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