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これは何かのエイプリルフールにしおりをはさみました!
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これは何かのエイプリルフール
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「え?なんて?耳腐ってるんですか?え?」
ひくつく頬を抑え、僕は必死に笑いかける。
どうか冗談だと。いや、ジョークに決まってるじゃないか。僕は馬鹿にしきった苦笑をもらしてみるが、男の真剣な表情は崩れない。
「俺と結婚してくれ」
「いやいやいやいやいや!ねーから!そんなのありえねえから!」
こいつ本気だ!
雰囲気からしてこんな笑えないジョークを言うタイプではないように見える。それに目が笑っていない。
「一目見たときから好きだ。結婚しよう」
こいつの脳味噌には結婚しかないのか!
思わずテーブルに足の裏を叩きつける。あまりの混乱と焦りと怒りがミックスされ、こんな暴動にでてしまったが、後悔はしていない。
「なんだよてめぇ!人拉致っといて一言目にそれかよ!理由も説明もなくか!?」
「お前に惚れた。それだけじゃ駄目か」
「駄目以前の問題だろ阿呆が!」
正論を突きつけると、本気で驚かれた。泣きたい。
「そもそも会ったばっかのお前にんなこと言われる筋合いは…!」
そこで僕の秀才の脳味噌は疑問に気付いた。こいつと僕は出会ったばかり。なら、僕は今、どんな格好をしている。
無言でテーブルに乗せた足を見下ろす。生足だ。自分が言うのはなんだけど、綺麗で女の持つ脚と言い差し替えても問題ないほどの。
僕は女装しているんだった。
イベントの連続で忘れていた。女もびっくりするような美女になっていたのだ僕は!
リョウヤとやらは、女装した僕に惚れてしまったのだ。
なんて罪深いんだろう!こんないたいけな不良のハートまで奪ってしまうなんて!美しいとは罪だね!
先ほどまでの混乱はどこへやら。分かってしまえば怖がる必要はない。カミングアウトしよう。この男には変態扱いされそうだが、背に腹は代えられぬ。
やわらかいウェーブを描いたかつらを何の前ふりもなく脱ぎ捨てる。その下から出てくるのはちょっと長いぐらいの男の髪の毛だ。ドヤ顔をしながら絶望に打ちひしがれているはずのリョウヤに舌を突き出した。
「どーだ!お前の幻想を打ち砕いてやったぜわっはっは!」
「………」
はんっ驚きのあまり言葉を失ってやがるのか。何も言わないリョウヤに打ち勝った気分の僕は足を戻そうとするが
「………そっちの髪形もいいな」
むしろ嬉々とこの現実を受け止めているリョウヤに、ぴたりと足が中途半端な体制で動きを止めた。
「はああああん?なんで驚かないの?絶望しろよ!」
「なにに?」
「何って…お前の恋した美少女は美少年だったんだ!まあ少女が少年に変わっただけで美しいことに変わりはないけど」
「知ってた」
僕の余裕が凍りついた。
「男だって知ってた」
「えっ…じゃあなにか?僕が男だってわかった上で告白してんの?」
冷や汗を拭う余裕もないまま、心臓を鳴らしつつ尋ねてみる。頼む、断って。
だがリョウヤはことごとく俺の予想を打ち砕いた。あっさり首を縦に振り、恍惚とした表情で俺を見つめる。
「女としてのお前と男としてのお前。両方に惹かれ両方に惚れた。だから」
結婚してくれ。
この数分で何度も連呼するリョウヤの甘い口説き文句に、激しい眩暈を覚えて俺は意識を失った。
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