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タクシーを降りたのは、俺が今年卒業した大学。
校門の隙間から何食わぬ顔で入って、そこから続く桜並木の坂道をのぼって行く。
昨日降った雨に散った花びらが浮かぶ水たまりを踏んで。
切れる息に、もう煙草を辞めようとかそんな事を思いながら。
坂道をのぼりきった所にあるのは図書館で。
その前には、ベンチと大きな桜の木。
俺とあいつが出会った場所。
見つけた。
まだ肌寒い4月の夜。
外灯に照らされたその背中は小さく丸まっていて。
ふと、夜の学内に煌々と浮かび上がる自販機に足を向ける。
何か温かい飲み物を…って思うけどその中身は冷たい飲み物ばかりに変えられていて、ホントにイラつく。
「おい、バカ。なにしてんだよ。」
仕方なく手ぶらのままその背中に声をかける。
いきなり声を掛けられて、びくっと震えた背中が強がるように振り向かない。
「明日も早いんだから…帰るぞ。」
ベンチで膝を抱えていた腕を掴んで立ち上がらせると、俺の顔も見ずにその手を振りほどこうとする。
「…メモ、見なかったのかよ。」
「見たよ。」
「字、読めないのかよ。」
「読めるよ。」
やっと俺の方を見た、その顔は明らかにほっとしてて。
そんな顔して、捜さないでなんてよく言うって本気で呆れる。
何時間ここに居たんだって位、冷たくなったその体を無理やり抱き寄せる。
それに抗うように、ワイシャツの袖口から出た俺の手首に爪を立てられて。
ぐっと力を入れてもがくその体を抑え込むように強く抱きしめる。
「離せよ。」
「うるさい。」
「なんで…」
なんで…なんて、こいつは今さら何を聞きたいんだろう。
好きだよ
愛してるよ
側に居ろよ
そんな言葉?
だけど好きだと言葉にしたら、好きだとしか伝わらない気がして。
愛してるなんて言い慣れなくて。
側になんて当たり前にいて欲しくて。
俺がこんな気持ちで居るなんて、お前は知らないだろうけど。
「…帰るぞ。」
そう言うと繋いだ手は振りほどかれること無く、俺に引かれるままに歩き出す。
触れた場所から与える体温に冷たかった手が馴染んで行って。
俺の手をぎゅっと握り返されたから、ちゃんと言葉じゃない気持ちが伝わったって安心する。
なあ、俺達はあと何度、こんな事を繰り返すのかな。
一緒に居れば、何度でも繰り返しそうだよ。
だけど。
俺はもう、お前と離れる事なんてできないから。
喧嘩をしたら、仲直りの方法を見つけて。
好きだって…愛してるって思ったら、それを伝える方法を見つける。
もしまた、お前がどこかへ逃げ出しても…どこにでも迎えに行くから。
どこに居ても、見つけてやるから。
<end>
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