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③
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鴨川ジムを出てから思わず自販機の横のゴミ箱を蹴ってしまいたくなるくらいに、宮田は自己嫌悪と千堂に対しての苛立ちに気持ちを荒立てていた。
そんな宮田の前を偶然通りかかったのか、かつてのジム仲間である木村が宮田に声をかけた。
「あれー?宮田じゃねぇか。こんな所で何してんだよ」
「……木村さん」
宮田の低い声と、真顔に話かけたのはまずかったか、と一瞬木村が怯む。
けれど、どこか様子のおかしい宮田に木村は、あえて質問を投げかける。
「ここ、鴨川ジムの近くだけど、一歩に用でもあったのかー?」
「……」
一歩の名前を出した途端、少し眉をひそめたのを木村は見逃さなかった。
「もしかすっと、不機嫌になってんのは、千堂がジムに居てるからか?」
その木村の言葉に宮田が俯き舌打ちした事によって確信がついた。
一歩や宮田が、周りに二人の関係を口外していないのは事実だが、木村にはなんとなく宮田と一歩が恋人関係であろう事は薄々感づいていた。
ここは、少し相談を聞いてやるか、と木村が宮田の肩に腕を乗せる。
「まぁまぁ、んな顔してても状況は変わんねぇんだし、ちょっと俺に付き合えよ」
「……俺、今減量中なんで遠慮します」
「ったく、可愛いくねぇなぁ。飯奢るなんざ言ってねぇよ。とりあえず、喫茶店いかね?すぐ近くに美味いコーヒーある店知ってんだ、俺」
「……」
無言なままの宮田を木村は強引に、引っ張り喫茶店に足を運ぶ。
「で?喧嘩の原因は?」
木村オススメの喫茶店は、客層がわりと若い女性が多く男二人だと少し目立つ。そんな事はおかまいなしなのか、おめあての珈琲が机に並べられ、店員が席を離れたのを見計らって木村が口を開く。
宮田や一歩より年上なだけあって木村が察しが良い事はすぐに分かった。
「…喧嘩じゃありませんよ」
ズズッと熱い珈琲を啜ってから、宮田のその言葉に木村は、少し考える。
「…ってことは、お前のやきもちか?」
その木村の言葉に、マグカップに手をかけていた宮田の手に力がぐっと篭り中の珈琲が少し揺れる。
それから何も話さない宮田に木村は深く溜息をはく。
「大丈夫、安心しろって。あのバカはお前の事だけしか考えてねぇーよ。あ、あとボクシング」
木村のその言葉に嘘偽りがない事は宮田の中では理解している事だった。実際、一歩が宮田の事を想っているのは宮田自身ひしひしと伝わってくるからだ。
それでも、まだ納得いかない様な表情をしている宮田に木村はまた言葉を増やす。
「でもまぁ、ちょっと流されやすいとこはあっけどなー」
まるで、先程のジムの状況を見ていたのではないか、というくらいの木村のドンピシャの言葉に宮田は小さく頷いた。
ここまできてやっと、示した宮田の反応に木村はまた確信をついた。
「大方、千堂の無理な要求に断れきれずってとこじゃねぇの。そこは宮田が目の前にいるなら、尚更改善しなきゃいけねぇとこだな」
「俺もそう思いますね」
「けどな、」
「…?」
また、珈琲を啜っては木村が少し強く机を叩く。
「一歩に気ぃある男に対してなら、お前も男として釘打っとくべきだと俺は思うけどな」
「……」
「まぁ、同性同士の恋愛なんざ、そう易々と他人に口外できねぇかもしんねぇけど、そこは腹括った方がいいぜ。」
まぁ、そういう事だ。と、珈琲を飲み終わった木村が机の上のレシートを手に取り片手を軽くあげて、会計へと向かっていった。
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