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⑥にしおりをはさみました!
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⑥
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木村が帰ってから宮田は暫く喫茶店に滞在していたが、一人でこんな所で考えていても埒があかないと思い、一旦喫茶店が出ることにした。
行き先なんて決めていなかった。けれど、どうしても一歩の様子が気になる。すると、自然に足は鴨川ジムの方向に向いている。
「気持ちより身体の方が正直かもしれねぇな」
ボソリ、と小さな独り言を口にしては店の前の交差点の信号を待つ。
もし、一歩に会ったらなんて言おうか。どんな顔をすればいいだろうか。信号を待っている時間を利用して、宮田は一歩の事で頭がいっぱいになる。
けれどそれを吹き消すかの様に交差点の向こう側から、突然の車のブレーキ音が聞こえて来る。
宮田と同時に宮田の隣や後ろで信号待ちしていた人達がざわざわと、騒めきたっていた。
宮田も何があったのか、と目を堪えていれば視界には見に覚えのある人物がうつった。その人物は、道路のガードレールの側で倒れている。
「……っ幕之内!?」
あまりの衝撃に一瞬全身に電気が走った。
信号が青に変わり、皆んなが一斉に歩き出す。
そんな中、その人混みを掻き分けながら宮田は全速力で交差点を走り抜けた。
直様、ガードレール側でぐったりと転がっている一歩の側に寄れば宮田は大声を張り上げた。
「すぐに救急車を呼んでくれ!今すぐにだっ!」
普段は出さない大きな声を張り上げる。
それから、一歩を抱えようと宮田が腰をおろした時だった。
「……おい。」
「………鷹村さん?」
一歩と宮田を見下ろし両腕を組んで仁王立ちしている鷹村が低い声で宮田に呼びかけた。
宮田からすれば、何故鷹村がこんな場所に居合わせているのかは分からなかったが鷹村の険しい表情に息を呑んだ。
「…救急車はいらねぇ」
「……はい?」
「一歩にぶつかってきたのは、こいつだ。」
鷹村が顎をくいっと示した先には、自転車に下敷きになった青木が倒れていた。
一体どういう事だと宮田が鷹村に視線で訴える。
すると一部始終を見ていた鷹村が深く頷きながら説明を始めた。
「まずはだな。赤信号にも関わらず、一歩が交差点に足を踏み入れた。すると道路端を全速力で自転車漕いでた青木が飛び出してきた一歩に直様気付きぶつからない様に片足で一歩を蹴りガードレール端に追いやった。だが、その直後バランスを崩した青木が自転車と一緒に転がっていった。以上だ。」
滅多に見れる光景じゃねぇ、と鷹村は何度もうんうんと頷いていた。
幸い車との接触はなかったみたいだが、未だに意識を取り戻していない一歩に宮田は眉間に皺を寄せる。
「……青木さんに蹴られた衝撃でガードレールに頭ぶつけてなかったですか?」
どれ程の勢いで倒れこんだのかを直接見ていない宮田は一歩が頭をぶつけていないか気になった。
「んー?知らん!」
意識を取り戻さない、と聞いた鷹村は低い唸り声を出しながら一歩の顔を覗き込み顔をじっと見つめた。
それから、数秒後今度は宮田の顔を真剣に見つめる。
「な、なんです?」
そんな鷹村の表情に少し後ろに引いた宮田を見て鷹村は腹を抱え笑い始めた。
急に笑い始めた鷹村を変に思った宮田がもう一度、一歩の方に視線を向ける。すると、さっきは慌てて聞き逃していたのか、すーすーと口元から寝息を立てている事に気付いた。
「………こいつ、寝てる」
「がはははっ!昨日は木村達と夜更かししてたからなぁ。おおかた、道路に倒れこんだのと同時に疲れがどっときて寝ちまったんだろうよ」
「…………でも良かった」
「……ん?なんか言ったか?」
「いや、なにも」
「そうかよ」
一歩の顔見て小さく微笑んでいる宮田に気付かない振りをした鷹村は道路端で未だに自転車の下敷きになっている青木に蹴りをいれる。
「オラぁ!青木ぃ、目冷ましやがれっ!いつまでもんなとこで、倒れてっと今度は車の下敷きになんぞぉっ!」
そう言いながら鷹村は片手で自転車を担ぎもう片手で、意識がはっきりしていない青木の腕を掴みズルズルと引っ張っていく。
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