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3-14(完)にしおりをはさみました!
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3-14(完)
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石鹸の香りに少しずつ汗が混ざる頃、晩里の本能は更に力を増した。
愛おしいという感情が芽生えて、それが全身を駆け巡るとやがて薬となり痛みを和らげてくれた。
俺の力が抜けきったところに晩里がひときわ大きく腰を打ち付けた。
誰か来たらとか、ベッドのギシギシ軋む音が聞こえたらとか、心配は尽きないのにそれをも凌駕してしまうような気持ちよさに意識を浚われる。
寮長とこんな関係になって、自分は寮に居られなくなるかもしれない。
晩里も職を追われるかもしれない。
それでも寄せては返す波のような快楽は2人を奥へ奥へと誘い、もう戻れないところまで連れていってしまった。
いつもいつも冷静な寮長がこんな情欲の焔を宿しているなんて一体誰が予想しただろうか。
清潔感の権化のようなこの人から想像されるのは、石鹸の如く冷たくて一点の濁りもない淡々とした情事を遂行する姿。
上品で品行方正な寮長の事だから、絵に描いたような完璧な情交で自分を導いてくれるかもしれない。
もしくは、いつも「罰則」で翻弄したような意地悪な事をしてとことん苛めてくるんじゃないかという危惧もあった。
だけど、どれも違った。
初めての性を覚えたばかりの中学生みたいな余裕のない青くさい房事が展開された。
けれどもそれがすごく晩里に似合っていて何故か鼻の奥がツンとなった。
温かさが伝わってきそうなほど荒い息を吐きながら、晩里はそっと俺の肩に顔を埋めた。
「好きです……」
今までずっと言いたくて我慢していた言葉を晩里は大事そうに送り出した。
「俺も、好きだよ」
石鹸とミントが主張する中にほんのりと汗が薫って、それは自分だけしか知らない世界なんだと自慢したくなる。
毎日をそれなりに面白おかしく過ごしていたつもりでいたけど、こんなに満ち足りた気分になったことはなかった。
何の涙かわからないけど一筋頬に垂れた糸を晩里の細い指がそっと拭ってくれる。
「無理をさせてしまいましたか」
「ううん。大丈夫」
額に掛かった前髪を労るように整えてくれるその指先は何処までも優しくて。
「好きです」
「俺も」
晩里によって描き出された初めてのいろごとは、すごくすごく清浄な世界だった――。
(完)
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