アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
なんで呼んだの?にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
なんで呼んだの?
-
「で?」
大きな目をさらに大きくさせてユキが言う。
僕の一つ下の後輩のユキは、目がぱっちりとしていて、可愛い。
中学の時は、髪の毛が黒くて、今より身長が低くて(今も充分低いが)、女の子みたいだと結構色々な人に言われていた気がする。
「なんで呼んだの?」
「えー。特別用があったわけじゃないよ。感動の再会したから、ゆっくり話したくなったの」
「だったら、ここじゃなくて良かったじゃん」
「僕の家だと誰にも邪魔されないで話せるでしょ?」
「でも、ガクと話すことって言ってもどっから話せばいいんだよ」
中学の時から、ユキだけが他の後輩と少し違った。
同じ部活ってだけだった。
別に小学校が同じわけでも、家が近所というわけでもない。本当に、ただ部活が一緒だった。
ユキは今と違って髪が黒くて、パッと見は大人しかった。
だから、文芸部に入ってきた時も、それっぽい子だな、と思った。
中学の時の文芸部は、今のサークルと同じで、僕たちの一つ上の代がいなかった。だから、僕は二年生の四月に早くも文芸部部長に任命されていた。
他の一年生は、いかにもそれが正しいと言わんばかりに、ガチガチの敬語を使ってきた。彼らは彼らできっと緊張していたのだと思う。その後は、それなりに砕けた敬語を使ってくれていた。
でも、ユキは違った。
ユキは、部長だと名乗る僕に、いきなり「文芸部って何するの?」と聞いてきたのだ。
まるで、親戚の誰かに聞くような口ぶりだった。
その場にいる僕以外の全員が固まっていたと思う。
当時、運動部だろうが、文化部だろうが、先輩は先輩で絶対的存在だった。僕も実際、二個上の先輩しかいない部活はかなり気を使っていた。
ユキは、無駄な敬語は一切使わなかった。
僕と名字が一緒だから、という理由で、僕のことは、「ガッくん」と呼んでいた。
僕は、「ユキちゃん」と呼んだ。
そんなつもりは一切なかったのだが、ユキだけは特別だったのだ。
しかし、僕が卒業してから、文芸部はどうなって、ユキがどんな学校生活を送ったかは謎だった。
僕は、不可抗力で、あの家を出ることになったから。
ユキが元気そうで良かった。
ユキと再会できたのは、何かの縁だと思った。そう思った瞬間、何故か途端に懐かしくなって、思わず「うちくる?」なんて、ちょっと女の子に送ったら危ないメッセージを送ってしまった。
既読がついてから暫くして、ユキから返信きた時は、正直びっくりした。
「行く」という短い返信が来たからだ。
まさか、本当に来てくれるとは思ってなかった。
「僕が卒業した後の文芸部はどうなったの?」
どうせ話すなら、最初からが良いだろう。
そんな軽い気持ちで聞いたのだが、ユキは簡単には答えなかった。
「部員が入ってこなかった。噂だと……もう、廃部になったらしい」
時が止まったようだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
12 / 36