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夏の章三 夏ぐれにしおりをはさみました!
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夏の章三 夏ぐれ
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「可児、携帯じゃね?」
「……遊命、出て」
「俺は一歩も動きたくねぇよ」
携帯は暫くの間鳴り続け、切れると可児がのそりと動き出した。
床に放りっぱなしの鞄から携帯を取りだし、着信履歴を確かめると、遊命に渡した。
「暫くしたら、またかかってくると思うから出て」
可児から携帯を受け取った遊命は、真っ直ぐに可児を見ていたが、可児は一度も目を合わさなかった。
ソファから離れ、一人ダイニングの椅子に座った。
歩いて数歩の距離が、遊命には遠く感じられた。
物理的に距離を縮めるだけなら、歩いていけばいい。
今はそれも辛いが、出来ないことじゃない。
でも、その先は?
……術がないように思われた。
どんなに寄り添うことができても、同苦を感じても、当事者にはなれない。代わることはできない。
可児が抱え込む闇を思うと、遊命は同じ立場になることしか考えられなかった。
二人して深く堕ちそうになったとき、可児の携帯が鳴った。
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