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部屋とYシャツと彼にしおりをはさみました!
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部屋とYシャツと彼
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しがみついたまま離れなくなってしまった彼を仕方なく抱き上げて浴室から出る。
片腕で抱き上げつつバスタオルをかけさせ、私の部屋に向かった。
「ここがおさむの部屋…?」
私の部屋は、正直殺風景だ。
ベッドと小さな本棚、窓にかけられたモスグリーンのカーテン、唯一の彩りはチェストの上の妻の写真。それだけ。
寝るためだけの部屋、と言っても過言ではない。
テレビは無い。機械に弱い私は、携帯電話すら持っていないのだ。
いいように言えば古風、悪いように言えば時代遅れ。
隣の妻の部屋にはテレビがあるが、それも二十年前のもので、今では写りもしないだろう。
世間のニュースは、お客さんと会話していれば自然と耳にはいる。
これといって不便だと思ったことすらない。
「そうですよ…、つまらない部屋でしょう」
苦笑して見せると、彼は小さく首を横に降った。
「少しここで待っていてくださいね」
ベッドの淵に彼を降ろし、開けるのにコツがいる偏屈なチェストの引き出しを引っ張る。
真上にある綺麗に畳まれた仕事用のYシャツを掻き分け、一番下にしまってあった黒いトレーナーを取り出した。
去年の誕生日に常連さんから頂いた物だが、サイズが少し小さく、一度しか着ていない。ほぼ新品だ。
私にとっては小さいが、彼にとっては充分な大きさだろう。きっとこれ一枚で膝近くまで隠れるはずだ。
「これを着てくださいね」
バスタオルにくるまり、ベッドの淵で足をぷらぷらと揺らしている彼にトレーナーを差し出す。
すると彼は、ぷいと顔を反らし、ほほを膨らませて唇を尖らせた。
「…それやだ」
「え…?」
「やなの!」
「そ…そうですか…、でも…ちゃんと洗ってありましたし…虫食いもないですよ…?」
広げて見せてみても、彼はこちらを見向きもせず、顔を反らし続けている。
困った。何が気に入らないのだろうか。
私自身一人っ子で兄弟もいないし、子供もいないので、子供の扱い方がよく解らない。
どうしよう、とおろおろしていたら、彼がちらりとこちらを向いた。
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