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なんてことない日常・春にしおりをはさみました!
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なんてことない日常・春
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「見て!桜! 」
マナビの視線の先には、ぽってりとした蕾が赤く色づいていた。寒風しのぐ細枝に、なんとか離れてやるものかと、必死な花の赤ん坊。鼻を真っ赤にして指をさす、隣の茶髪坊主の昔に少し似ている。
「ばか、あれは梅だよ。父さんがお前に教えてくださっていただろう? 」
ハルは窓を閉めた。外は冷える。得体の知れないものが蠢いている。不用意に外の空気を吸いたくない。
「あの時は、何のことなのかよくわかっていなかったんだ。だって、まだ蕾はなかった。ただの木を見たって、分からないよ」
閉じられたガラス窓をじっとりと見返しながら、マナビは口をとがらせた。
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