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地獄を見る4にしおりをはさみました!
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地獄を見る4
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「成。鈍臭いね〜。」
1人の先輩は
肩まで伸ばした黒髪をくるくると回して
ニヤニヤと笑み。
もう1人の腰まであるだろう少し明るい茶髪を
横に流して1つで結んでいる先輩は
立ち上がると白石先輩が運んでいた水をとって
その頭にかける。
「やだなー。ビショビショじゃん?汚いなぁ。」
その茶髪の先輩に
無理やり立たせられようとして
白石先輩は、顔を歪ませた。
白石先輩は、足を怪我している。
何度も見てきた場面だ
だけど、その度に助けるわけにはいかない。
白石先輩たちから視線を背けようとした瞬間。
「何やってるんですか?」
凛とした声が響き
その茶髪の先輩の腕をとる荒谷の姿があった。
「新くんは、相変わらずだねぇ。ねぇ?蒼くん」
「みたいだな。」
荒谷から視線を逸らしながら答えると
何かに呆れたような浅いため息が矢井島から聞こえた
荒谷は、荒谷であの先輩たちと揉めているようで
あの先輩たちの鋭い声が食堂に響いていた。
「ほーんと、どっちも下手くそなんだから。ああいう輩には真っ向勝負でいったって逃げられるだけだよ。
ちゃんと見ててよ、蒼くん。」
「……何のこ、」
あの先輩たちの所へと矢井島は小走りで駆け寄っていく。
「成先輩〜。」
白石先輩に手を振りながら
矢井島がひとりでにこけたかと思うと
イタタタと涙目を指で拭う。
「何でこけちゃったんだろう。可笑しいなぁ。
何かに引っかかったような気がしたんだけど。ここに引っかかる物なんてありませんしね、先輩。」
和かな表情で
あの黒髪と茶髪の先輩に語りかける矢井島に
先輩たちは、ぎこちなく相槌をうった。
「あれぇ?でも、成先輩もこけちゃったんですか?大丈夫ですか。それに、頭も濡れてますよ。こんなことってあるのかなぁ〜。」
先輩たちに向かって
いつまでも笑顔のまま台詞を続ける矢井島に
先輩たちは罰の悪そうな顔をして
そそくさと食堂から出ていこうと扉へと足を向けだした。
「先輩、また会いましょうね。」
先輩たちに見せていた健気そうな表情から
扉へと向かいだしたその先輩達の後ろ姿を見る矢井島の
笑っているのに笑っていない瞳に酷く戦慄した。
「あの子面白いね。」
笑いをこらえきれないのか
テーブルの下で声を出さずに笑う純さんは
笑いすぎて涙を拭っていた。
「うん、面白い。」
笑いが収まったのか、頬杖をついて
穏やかな目で、矢井島を見つめながら純さんはポツリポツリと話しだした。
「もしもさ、もしも。どうにもならない事態が起こったら、『佐藤』の名前を出して闘ったって構わないよ。春くん。佐藤を、利用したって構わない。『佐藤』は、君の盾であり剣にもなりうる。どう使うかは春くん次第だ。」
「……ぇ?」
「だって、天宮の名前は出せないだろうから。あぁ、闘って欲しい訳じゃあないよ。できれば、君には、無事3年間を過ごして欲しいから。どうか平穏に静かに」
_____ピピピ、ピピピ。
純さんのワイシャツの胸ポケットから
機械的な音が鳴り響いた。
それを純さんが確認すると
眉をさげて申し訳なさそうにして立ち上がった。
「どうやら、時間切れだ。宮路校長にもみつかったらしいしね。」
「みつかったって、」
「近くで仕事があったからきたんだけど。無断滞在ってわけね。」
悪戯っ子の表情で小さく笑いながら
食堂の扉へと向かおうと立ち上がる。
「あぁ、そうそう。もしも、黒河理人って保健医に何か言われても気にしなくていいよ。」
「黒河先生……?」
「うん。それじゃあ、僕はもう行くよ。暫くは会えないけど元気でね。」
純さんは、ふんわりと微笑んで
俺の頭をポンと撫でると食堂を出ていった。
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