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若様6にしおりをはさみました!
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若様6
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「別に、矢井島とはそこまで仲も良くないので言いませんよ。それと、画面が違います。」
「………へ?あ、本当だ」
必死な形相で訴えかけてきた
一色蓮治は、驚いたように目蓋を瞬かせて画面を確認する。
どう見たってこのみるからに害なんてなければ寧ろ誰からも好かれそうな、一色を矢井島が何の理由もなしに、一方的に嫌ってるとは思えないとは思う。
大体、同じピン留をしといて嫌われているっていうのは信じがたい。
「何で、矢井島に嫌われてるなんて思うんですか」
「あ、………っと____。」
「答えたくなければ答えていただかなくても、」
「いや、答えるよ。嫌われてるっていうのは少し語弊があるかもしれない。嫌われるような事をしたのは、美音を傷つけたのは、俺で。そうなって当然のことをしたんだ」
一色は頭の後ろを掻きながらヘラリと笑った。
この人のことは、知らないけれどその笑みが偽物だということくらい分かった。
その空間を引き裂くように
端末が音を立てて震えたのにに慌てふためきながらも一色は、電話に出る。
「あ。ごめん、今から行くから……っ!………忘れてない忘れてない、今、迎えにいくから、そんなに怒らなくてもっ……!!」
電話の相手は呆れたような唸るような声を出していた。
どんどん一色の表情が蒼ざめていくのを眺めていると、一色は両手を合わせて拝むようなポーズを取り
「美音のことは、くれぐれもお願いします。ほんとに!!」
それだけを言い残すと
飛ぶように、電話相手の所へと向かっていった。
その背中を見送って、コンクリートの壁に背を向けて
座り込む。
「……一色蓮治とあやめは、関係ない…………………か。俺の考えすぎだな」
「何が“考えすぎ”なんどすか?」
「………なんで、ここに…………っ!」
気配もなく突然、現れた声に
驚いていると、麦わら帽子の少女は不満げにプクゥッと頰を膨らませて俺の携帯型生徒手帳を翳した。
「もう!まるっきし、失礼だなぁ。コレ渡すために探しとったのに……!」
この少女の他に誰かいないかと視線を巡らせていると
少女は細い指先を曲げて考え込むような仕草をして、小首を傾げながら尋ねる。
「やっぱり、さいぜんの黒髪の子ってお知り合いどすか?」
「………いや。」
首元のチェーンを弄りながら答えると
何故か、胸の奥がツキリと痛んだ気がした。
ごめん、と
ここにいないあやめに思いながらも
その麦わらの少女に返した言葉に胸の痛みは増すばかりで
それでも何も言わずに、言葉の続きに耳を傾ける。
「あたし、弓道を嗜んでいます。一射絶命___“次の矢があると甘えるのではなく、1本の矢に己の命をかけるくらいであれ〟という意味なんどす。」
「次があるとは限りません」「本当にいいんですか」とでも言いたげな瞳に目蓋を閉じてからゆっくりと開く。
「だから、知らない子だよ。」
罪悪感と何かを失ったような感情と色んなものが混ざり合う。痛みは、やっぱり、消えてくれない。
「……そうどすか。あ!そういえば、さいぜんから荒谷はんって人から連絡が来て……」
麦わら帽子の少女の持つ俺の携帯が
音を鳴らし出したディスプレイに“荒谷新”の名前を映し出したその携帯を受け取った。
「もしもし」
『……やっと、繋がった!花火、見つかったぞ……!!』
「分かった。今、何処にいる?」
『広場の風船が売っている所』
「了解」
荒谷との通話を切り、座り込んでいた状態から立ち上がって、麦わら帽子の少女と一緒に荒谷のいる広場へと向かう。
「あの、今更そやけどもお名前おせてもろてもええどすか?」
「蒼、佐藤蒼……です」
「わぁっ!ほんまどすか?あたし、葵って言うんどす。なんだか似てますね。そうだっ……!あたしに聞きたいことおまへんか?あたしは聞いたさかい蒼はんも聞いてください!」
葵という少女の期待の眼差しに耐えかねて
どうにか、話題を引っ張りだそうとするが
何にも浮かばずビルの巨大スクリーンに映し出される
広告の映像が緊急ニュースに移り変わっていく様を眺めることしかできなかった。
「あ。この国」
「知ってるの?」
「先生のお師匠様みたいな方がこの国のお話をしとったさかい。それに、あたしも興味のある国やので」
真剣な眼差しで見つめる葵につられるようにして
俺ももう一度、巨大スクリーンへと視線をむける。
【ソル・レヴェンテ王国 大使 来日】
約10年ぶりと謳われる大使の来日を流すニュースの放送から何気なく、視線を前に戻すと丁度
荒谷の姿を捉えた。
けれど、その表情はいつもの明るさはなく
本当にそこにいるのは荒谷新なのかと思うほどに
ひどく、冷めた瞳を画面に映している荒谷がいた。
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