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欠片(かけら)2にしおりをはさみました!
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欠片(かけら)2
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NO side
「会長。多分、もう時間切れや。」
瑠夏が地面に落ちたままだった唯賀の端末を拾い上げると唯賀へとディスプレイを向ける。そして、着信音とともに画面には『校長』と映し出されていた。そして、すぐに校長からの電話を取り、話すにつれて温度感が低くなっていく電話を終えた唯賀は瑠夏に向かって不機嫌そうに告げた。
「俺は戻る。だから、瑠夏。ここら辺を探せ。」
「報酬は何くれるん?」
「俺にできることなら何でも。」
「それは、真剣に探さなアカンな。」
瑠夏にこの件を託して学園に登校して早々に唯賀は生徒会室へと向かった。そして、生徒会室の扉を開け、授業中である時間帯にも関わらず、生徒会室にいる人影に目を細める。
「よぉ、唯賀。」
生徒会室にあるソファーに寄りかかり、扉の前にいる唯賀を目に留めた鶯谷は5年ぶりの挨拶にしては手短に挨拶を告げる。その挨拶に返事をすることはせずに、唯賀は鶯谷に問いかけた。
「なんで、急に戻ってきたんですか。」
その唯賀の問いかけに鶯谷が乾いたように笑った。
「ははっ。全員が全員、同じようなこと聞くもんだな。まぁ、そりゃそうか。俺は、逃げるようにここから出て行ったもんだからな。」
鶯谷は、背もたれに寄りかかっていた状態から身体を起こして唯賀へと返答する。
「安心しろよ、唯賀。俺は、お前達のどっち派だとかいう派閥争い(おままごと)に関わる気はないからな。俺は、目的を果たせば、すぐにいなくなるさ。」
「鶯谷先輩。」
「ところで………お前。何で、会長なんかやってんの。」
「どういう意味ですか。」
「父親と同じことはしないって言ってたのは、お前だろ。心境の変化になることでもあったのか。」
「アンタ、そんな雑談しに生徒会室で待ってたんですか。」
「そうだ。こんなくっだらない雑談の為に、俺はここにいる。」
「話にならない。」
これ以上、話すことはないと背を向けて生徒会室から出て行こうとする唯賀は背後からかけられた言葉に、立ち止まる。
「生徒会長をやってる理由に、特に春田側のお前に楯突く連中、全員、退学させてるのと何か関係でもあんのか。」
その言葉に唯賀が振り返り、唯賀と鶯谷の視線が交差する。
「ある__________と言えばどうするんですか。」
「別に、俺には関係ないことだからどうでも。でも、お前、何でそんな風になったわけ。確かに、昔から春田側だっけ?そっちの方には良い印象は持ってなかったのは確かだろうが、」
「心境の変化ですよ。鶯谷先輩が、この学園から去った時と同じように。」
「あっそ。じゃあ、お前さ、あの白鬼だったか………アレを探した理由もソレ?お前が、新歓で見事なまでにやり込められたって聞いたけど。」
「…………そうですよ。」
鶯谷は唯賀が白髪の生徒を探していた理由が、本当に雪の言う通り庇護欲とかそういう類のものではないのかと、唯賀の様子を窺った。
「俺が負けるなんて、」
唯賀に楯突くような生徒が悉く退学になっているのを知りながら、何故そんなことを聞くのかと思いつつも、唯賀は鶯谷の問いかけに答えようとした。
けれど、さっき見た、あの〝あおいろ〟が脳裏をよぎったその瞬間に唯賀自身も理由も分からずに口を噤んでしまう。実際、10秒に満たない沈黙の後に、その先の言葉を躊躇わせる理由が分からずに苛立ち混じりに唯賀は頭を横に振った。
この答えに対して、僅かな違和感が芽を出してはいたものの、この根底が揺るぐはずがないとその先の言葉を繋いで鶯谷へと告げる。
「俺が負けることは、ありえない。……だから、あの生徒を探してた理由は、この学園から、アレを追い出すために決まってる。」
「本当に、それだけなのか?」
「他に、何か理由がいりますか?」
「あぁ、なるほど。コレは…………庇護欲なんてものじゃねぇな。」
唯賀にも聞こえないようにボソリと呟くと、鶯谷は座っていたソファーから立ち上がって、唯賀の横を通り過ぎようとしたが、でも、どうにも腑に落ちなくて唯賀へと尋ねる。
「お前、覚えてないのか?」
「何をですか。」
「………いや。何でもない。まぁ、どっちにしても、今のお前じゃどう考えても連れ出せないだろうな。」
「は?」
「こっちの話だ。じゃあな、生徒会長様。」
困惑する唯賀の横を通り過ぎた鶯谷は当てが外れたと思って、頭をガシガシと掻きむしりながら苦々しそうに呟く。
「早く…………手遅れになる前に見つけねぇとな。」
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